第57回日本作業療法学会

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[PN-2] ポスター:地域 2

2023年11月10日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (展示棟)

[PN-2-9] 通所リハビリテーション利用者の主介護者における介護負担感と作業機能障害に関する研究

加賀山 俊平1, 藤井 啓介2, 角 明子1 (1.医療法人社団菫会 介護老人保健施設 野洲すみれ苑, 2.関西医療大学保健医療学部作業療法学科)

【背景】地域包括ケアシステムの推進によって,誰もが住み慣れた地域で生活をしていくことが目指されている.しかし,多くの要介護高齢者は配偶者や同居家族といった主介護者の支援によって安全に在宅生活が継続されている.主介護者においては,介護といった行為そのものが与える身体・精神的負担のみならず,介護に伴い,主介護者の生活リズムが乱れるといった問題がある.我々は,介護に伴って主介護者が日常生活においてネガティブな経験をしている状態,すなわち作業機能障害に陥っている可能性が高いと考えている.我々が実施した予備的調査によると,実に主介護者の半数は作業機能障害を有しており,また,介護負担感との間に強い相関関係を認めた(筆者らのグループ,未公表).したがって,要介護者が住み慣れた地域で在宅生活を営む上では主介護者の生活サポートも更に充実させていくことが必要不可欠であると考える.要介護者の在宅生活を継続させていく上で,重要なサービスの中の1つにショートステイ(SS)がある.SSは様々な目的で利用されることがあるが,主介護者の介護負担感の軽減は主たるものであると考える.SSを適切に利用することで,在宅生活を支援している主介護者の介護負担感や作業機能障害を是正できる可能性がある.
【目的】本研究では,通所リハビリテーション(通所リハ)利用者の主介護者の介護負担感と作業機能障害がSS利用の有無により違いがあるかを明らかにすることとした.
【対象・方法】A県B市にある介護老人保健施設の通所リハ(35名定員)を利用している者の主介護者を対象にアンケート調査をおこなった.対象者の包含基準は通所リハ利用者と同居している者,除外基準は主介護者自身が要介護認定を受けている者,著しい認知機能低下を認める者とした.その結果,71名にアンケート調査票を配布した.介護負担感はZarit介護負担尺度を用いた.作業機能障害は作業機能障害の種類と評価(CAOD)を用いて52点以上を作業機能障害ありとした.その他に,性,年齢,通所リハ利用者との続柄,生活機能についてアンケート調査票より収集し,通所リハ利用者の要介護度,世帯構成,通所リハを利用する主たる原因疾患,Barthel Indexをカルテ情報および担当療法士より収集した.統計解析は,SS利用の有無により2群に分け,Zarit介護負担尺度の合計得点,CAODの合計得点について群間比較(対応のないt検定)をおこなった.筆者らが所属する組織の研究倫理委員会の承認および対象者の同意を得て実施した.
【結果】41名より回答が得られた.SS利用者の主介護者(14名)のZarit介護負担尺度の合計得点は34.8±14.5点であり,SS非利用者の主介護者(27名)の43.7±22.6点と比して有意に不良な値であった(p =0.031).一方,SS利用者の主介護者のCAOD合計得点は54.4±17.9点であり,SS非利用者の主介護者のCAOD合計得点(43.7±22.6点)との間に有意差を認めなかった(p =0.130).
【結論】本結果より,SSを利用している者の主介護者の介護負担感はSSを利用していない者の主介護者よりも介護負担感が有意に大きく,作業機能障害に差異がなかった.つまり,SSを利用している者の主介護者は,日頃の介護負担が大きく,SSを利用している背景があると考えられる.SS利用をしている者の主介護者においては,SSの利用は主介護者の介護負担において非常に重要なポイントとなる.SSは僅かな期間であるが,介護負担の軽減に向けた支援を展開していくことが必要である.