第57回日本作業療法学会

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[PN-5] ポスター:地域 5

2023年11月10日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (展示棟)

[PN-5-5] 医療機関から自動車学校への転職経験

高間 達也 (七尾自動車学校)

【はじめに】移動手段の一つである自動車運転は,障がいの有無に関わらず社会参加への重要な役割を担っている.一方で,自動車運転による移動を安全に行うためには,様々な機能が必要となり個人の特性および機能低下や障がいの影響を鑑みた介入が必要であるなど,慎重を期する場面も多い.近年,医療機関や作業療法士(以下,OT)が公安委員会や自動車学校と連携を図り,支援を行うことが多数報告されている.そんな中で,医療機関から自動車学校へOTが転職し活動を行った経験を報告する.
【転職の経緯】2022年4月に総合病院から,自動車学校職員へ転職をすることとなった.元々,医療機関で移動支援を行う際に実車運転評価を依頼するという連携機関であった自動車学校であり,OTについては一定の認識を有する職員が多い自動車学校であった.転職の目的として,医療と自動車学校の連携強化および県内の自動車学校への活動発信を目的としていた.
【企業紹介】七尾自動車学校(以下,当社)は,石川県能登地方で人口は5万人を切り,高齢化率は40%弱の地域に所在する自動車学校である.自動車学校の業務として,初心者運転者の教育の他,地域の交通コンサル業務や高齢者講習などを行っている.また,自動車運転に限らず,ドローン教習や地域の伝統食品普及活動をはじめとした地域活動も行っている企業である.
【働き方】当社では,自動車学校の中でもいち早く働き方改革に取り組みを行った企業であり,自身の雇用形態は,正社員ではあるが副業を認められたパラレルワーカーとして雇用されている.自動車学校の多くは,閑散期と繁忙期が明確な業務であり,閑散期を中心として副業を行いながら自動車学校の職員として勤務している.また,教習業務を行うために教習指導員の資格を取得する必要があったため,茨城県の安全運転中央研修所にて普通自動車教習指導員課程を修了した後に教習指導業務に就いている.
【活動内容】教習指導員として,教習生への教習指導を行う業務を行う他,作業療法士としての活動を行っている.≪医療福祉連携担当として≫地域の医療機関との連携方法を見直し,医療機関と自動車学校職員間の情報の伝達役として,医療機関側の目的と自動車学校で行われる評価が逸脱しないように取り組んでいる.また,発達障がいおよび精神疾患を有する方からの免許取得の希望が増加している中で,直接教習を行う役割や自動車学校職員へ関わり方などの指導についても取り組みを始めている.≪採用担当として≫採用係として,新たな人材雇用に加え兼業者・副業者を雇用する活動から,過疎化および少子高齢化が進む地域への関係人口を創るために,地域の社会資源を利用した新たな免許取得コンテンツ作成などを行っている.
【活動経験から】教習指導員資格を有するOTとして,業務を行う中で様々なハンディキャップを抱える教習生に関わる機会がある一方,自動車学校および職員の中で対応に苦慮する場面も見られた.これらの問題に対して作業療法の学問を活かした知識伝達や仕組み作りが重要であることを感じている.また,移動支援のみではなく地域づくりの一端を担う役割として活動する機会もある中で,すでに存在する社会資源の利用については当然ながら新たな連携や仕組を創造するための取り組みが必要であることを感じる経験となった.作業療法士が自動車学校で勤務するにあたり,収入の問題や働き方について課題になることが考えられる.しかし,自動車学校業界内でも副業の流れが進みつつある中で,作業療法士が勤務することで既存の社会資源が新たな形となり地域貢献に繋がると考える.