第57回日本作業療法学会

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[PN-5] ポスター:地域 5

2023年11月10日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (展示棟)

[PN-5-8] 沖縄県の作業療法士による自動車運転支援の実態調査

玉那覇 迅1,2, 狩長 弘親3 (1.医療法人大平会嶺井第一病院, 2.吉備国際大学大学院(通信制)保健科学研究科作業療法学専攻修士課程, 3.吉備国際大学保健医療福祉学部作業療法学科)

【はじめに】自動車運転支援は作業療法士の対象者にとって重要な支援であり,地域によって支援のニーズは様々である.沖縄県(以下,県内)は旅客輸送のうち公共交通機関が占める割合は3%余りで自動車保有率は県民1人につき約1台である.県内は全国でも支援の必要性が高い地域であるものの作業療法士の支援の実態は明らかになっていない.本研究の目的は県内の作業療法士による自動車運転支援の調査を医療機関や地域の施設を対象に行い,支援の実態を把握し,問題点や課題を明らかにする事である.本研究の意義は地域のニーズに沿った円滑な支援への一助となる事や県内の作業療法士で共通認識を醸成し,課題解決への糸口となる事である.
【対象と方法】対象は日本作業療法士協会,沖縄県作業療法士会に所属する作業療法士が勤務する県内の身体及び精神障害領域の医療機関や施設,自立支援施設の162施設とした.アンケート調査を郵送法とWebにて行い, 回答者は作業療法士で施設責任者,又は支援の主担当1名とした.期間は2022年2月7日〜4月9日,設問は基本情報,支援の有無,各内容の実施(評価や代替手段等)やリハスタッフの関わり,難渋ケース,支援の必要性等である.回答方式は各設問により選択式又は自由回答とした.選択式は地域別,支援の有無別,所属群別による比較をFisherの正確確率検定を行い,R,改変RコマンダーVer4.0.2を使用した.有意水準は5%とした.自由回答は計量テキスト分析にて共起ネットワークによるカテゴリー化,対応分析を行いKH Coder (Ver.3.0)を使用した.本研究は吉備国際大学倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】回収率は64.2%(104施設),実施率は37.5%で地域別では有意差はなかった.所属別では病院(身障)68.9%で有意に多く,施設(介護保険)22.2%,精神障害や自立支援領域は共に0.0%であった.各内容の実施は病院(身障),施設(介護保険)の有意差はなく作業療法士を含むリハスタッフの関わりがみられた.そして,難渋ケースのカテゴリーとして<独断で行動する><急性期で退院するケース><本島と離島の連携が不十分>等があげられた.また,代替手段は「家族の車」「バス」が多く「コミュニティバス」は少なかった.県内の支援の必要性は「そう思う」が全体で81.6%,理由のカテゴリーとして<公共交通機関の未発達や利便性の低下><若年者や高齢者に必要>等があげられた.一方で支援なし群からは<運転を止めないといけない現状もある>等があげられた.対応分析では「北部」と「離島」が近くに配置し,両地域間に「家族」が布置されていた.
【考察】実施率は先行研究と同等であり,県内の各地域で支援が行われ,支援を実施している施設(介護保険)は比較的に人員が配置されていた.しかし,精神障害や自立支援領域では対象者を十分に掘り起こせていない可能性があり,支援の情報を幅広く周知する必要性が考えられた.そして,病識低下等がある対象者は難渋し,急性期からの受け入れ機関や離島と本島の連携等が課題である.又,利便性が問題視されている県内バスは,運賃等の経済的な観点からも重要な代替手段となっていた.しかし,コミュニティバスは少なく,地域資源の情報が対象者へも行き届くような環境整備が必要と考えられた.そして,県内の作業療法士は若年者の就労や高齢者の生活に必要性を感じていた一方で,運転を停止する支援の検討,支援なし群へはリスク管理について共有する必要性も考えられた.又,北部や離島は中南部地域と比べ公共交通機関が乏しく過疎化も進んでいるため,家族支援が重要である等,県内の各地域によっても移動環境やニーズが異なる事が示唆された.