第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-6] ポスター:地域 6

2023年11月10日(金) 17:00 〜 18:00 ポスター会場 (展示棟)

[PN-6-2] 徳島県における作業療法士の就労支援実態と課題

村上 義和1, 大前 博司2, 野尻 裕3, 佐尾山 諭4, 高橋 真也5 (1.サービス付き高齢者向け住宅 久千田, 2.徳島大学病院リハビリテーション部, 3.伊月病院デイケアセンター, 4.鴨島病院リハビリテーション部, 5.徳島障害者職業センター)

【はじめに】
 「第三次作業療法5ヵ年戦略」では地域包括ケアシステムへの寄与を推進していくための重要事項の一つとして,就労支援実績の提示と他職種,他団体との交流を図ることが掲げられているが,作業療法士(以下,OT)による復職・就労支援の実態を報告したものは少ない.徳島県作業療法士会では平成30年10月より就労支援SIG(Special Interest Group)が認可され, 9医療機関のOTが参加し活動している.今回, 徳島県の就労支援の実態を調査し,就労支援SIGが取り組むべき課題を明らかにすることを目的にアンケート調査を実施し,結果として就労支援の制度に対する知識が不足しているとの課題が得られたので報告する.
【方法】
 アンケートは選択式と自由記述式の質問紙調査を実施した.対象者は地方厚生支局データベースを参考に急性期,回復期機能を有する医療機関に属する作業療法士を対象とした.回答期間はアンケート発送から3週間とし,内容は経験年数と所属,就労支援実績と対象疾患,復職・就労を目的としたリハビリテーション内容,情報収集先,就労支援に対する課題の質問とした.倫理的配慮として,協力は自由意志,匿名での調査,得られた情報は保護することを口頭にて説明し,文書にて案内を行った.郵送法による調査として返送方法は返信用封筒を同封し,代表者にて回収,返送を依頼した.
【結果】
 回収率は87%(307/354)で臨床経験年数は1年目から31年目までと幅広い結果であった.所属領域では急性期11%,回復期65%,生活期9%,介護保険分野15%であった.就労支援の経験があるOTは24.7%に留まり,対象疾患は脳血管障害が最も多い結果となった.復職・就労を目的としたリハビリテーション内容については生活リズムの構築が55.7%,次いで体力・耐久性52%,服薬管理46%,公共交通機関の利用が42%,自動車運転は36%となった.就労支援で難渋したかの設問では難渋しなかったと回答したのは1%未満であった.就労支援の課題では制度がわかりづらいが94%となり,知識・技術が十分ではないが87%,職業リハビリテーションの情報が入らないが78%となった.
【考察】
 徳島県の障害者実雇用率は増加傾向であり,全国平均を上回っていることからも医療機関における支援の機会は増加することが予測される.しかし,今回の調査ではOTの制度の理解や知識・技術が乏しく,就労支援に難渋したと回答している.このことからOTは関連機関の役割などを含む就労支援に関する知識・技術の欠如により,積極的に就労支援に携わることができず,対象者が在宅復帰後に地域で潜在化することが考えられる.さらに職業リハビリテーションの情報が入らないと感じていることからも就労支援に関する情報を取得する場が不十分であり,関連機関との交流や連携が進まない要因だと考える.
【まとめ】
 OTは就労支援の一端を担うことが期待されているが,今回の結果から制度の理解や知識・技術を身に付けるや職業リハビリテーションや就労支援の情報が行き届いていないことが課題として得られた.就労支援SIGでは,障害者職業センター職員との意見交換や他機関との合同研修会を検討している.各医療機関における難渋例についても相談できる関係性を構築し,相談窓口を設置するなどして支援体制を整備することが必要であると考える.