第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-6] ポスター:地域 6

Fri. Nov 10, 2023 5:00 PM - 6:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-6-5] 就労継続支援B型施設における作業療法士の関わりにより早期に退所ができた事例

新泉 一美1,4, 山田 孝2,3 (1.湘南医療大学, 2.東京保健医療専門職大学, 3.人間作業モデル研究所, 4.株式会社hitonowa)

<はじめに> 令和4年度から就労移行支援事業所において作業療法士(以下,OT)も加算の対象となった.その理由は,OTが常駐している事業所とそうでない事業所では,①就職率,②継続率に2倍近い違いがあるためとされている.当事業所は,上記のような作業療法士の利点を活用するために設立された就労継続支援B型(以下,B型)である.その特色は,B型で安定することを目標にせず,状況を明確にして少しでも多くの利用者がステップアップを目指せるように取り組むことである.それを実現するために作業療法士が常駐している.また,人間作業モデル(以下,MOHO)を実践するため,定期的な評価として,作業に関する自己評価(以下,OSA),作業質問紙(以下,OQ)を全利用者に実施している. 事例は,精神科病院退院直後に当事業所の利用が決まった50歳代の女性である.職業準備性ピラミッドを参考に,OQで生活パターンを確認し,OSAで目標設定を明確にすることができた.その結果,目標を共有することで,短期間で安心して就労継続支援A型(以下,A型)へ移行することができた経過を以下に報告する.発表について,本事例,事業所責任者の了承を得ている.また,発表に関連し,開示すべきCOI関係にある企業等はない.
<事例紹介・作業療法評価>統合失調症を示しした50歳代の女性である.自宅で生活したいと強く希望していたが家族の拒否が強く,現在はグループホーム(以下,GH)で生活している.そのことが原因で不安定となり,怠薬し,入退院を繰り返していた.MOHOでの評価では,個人的原因帰属では,退院したばかりでA型や一般就労を希望しているが自信がない状態である.価値は,現在兄の指示で集団型のGHに入所しているが,実家に帰りたいと希望している.興味は,一般就労かA型に興味を示している.そして工賃をできるだけ稼ぎ,アパート型のGH入所を希望している.仕事内容は,パソコン(以下,PC)作業が長く続けている.習慣は,月2回の病院受診以外の平日はB型へ通っている.ストレスが溜まると隠れて飲酒をしてしまう.役割は,GHの住人とB型の利用者である.遂行能力は,運動技能は年齢相応層に保たれている.処理技能は,自己中心的な考えがあり,怠薬することがある.現状を自分のいいように判断してしまうことがある.PC操作が得意である.コミュニケーションと交流技能は,良好であるが,この人を嫌いとしてストレスを溜め込む傾向がある.
<作業療法目標>服薬管理を徹底し,自分の興味がある仕事ができる環境へと就職できるようにする.相談できる環境を作る
<経過>服薬管理は,GH管理者と服薬管理表を用いて確認した.入所1ヶ月は,怠薬が数回みられたが,それ以降は自己管理で服薬管理ができるようになり,B型利用時にOTに報告できるようになった.環境に慣れてきた3ヶ月目には,A型に挑戦したいとの希望が聞かれるようになり,現在のGHから通えるA型を,PCを用いて調べて見学の予定を立てて実施した.2カ所見学した後,PC操作ができるA型に決めて移動することとなった.
<考察>今回は,ストレスを抱えることで怠薬し,症状が不安定になり入退院を繰り返していた事例を担当した.退院直後からOTが常駐しているB型を利用し,MOHOを実践したことで,本人が現状を把握でき,不安をOTに相談し対策を施すことができたと思われる.問題の中核であった意志に対する対応が短期間でのステップアップにつながったと考えられる.本事例を通してB型におけるMOHOの実践は効果があることを示すことができたように思われる.