第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-7] ポスター:地域 7

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-7-8] 地域活性化に役立つeスポーツは作業になりえる期待

南 征吾, 石代 敏拓, 竹原 敦, 石井 良和, 村田 和香 (群馬パース大学リハビリテーション学部)

目的:本研究の目的は,社会人eスポーツに参加した現役社会人の生活の構造を概観した上で,eスポーツの経験が作業の可能化に役立つ枠組みや社会的構造について明らかにする.本研究の意義は,地域活性化に役立つeスポーツを分析し,作業の視点で社会的構造に役立つプロセスを示すことである.本研究のeスポーツとは,競技者の行動をデジタル化したゲームを用いた競技,他者との競争や観覧する娯楽性を持ったゲームスタイル,とした.なお,本研究はいまだ明らかにされていない事象なので,質的研究を用いて分析を実施した.
参加者:試験参加者は,県庁主催の社会人eスポーツリーグ(2022,第1回)にプレイヤーとして参加した現役社会人,年齢40歳代の男性である.
方法:本研究の分析方法は,質的研究の計量的テキスト分析による探索的検討を実施した.データは,インタビューで得られた逐語録とした.インタビューの内容は,①社会人になってのeスポーツと仕事のバランスについて,②eスポーツの社会人リーグに参加について,とした.インタビューの回数は,参加者に対面で2回,書面でデータ確認1回,計3回実施した.インタビューの時間は,60分ほどとした.インタビューの内容は,ICレコーダーに録音し,逐語録を作成した.逐語録であるテキストデータは,質的データ分析ソフトKH-Coderで分析した(樋口ら:2014).抽出過程において,対応分析を確認しながら強制抽出する語と使用しない語の指定を設定した.なお,出現数による語の取捨選択は,クラスタ分析を確認し最小限数を設定した.次に共起ネットワーク分析にて,語の関連性を分析した.これらの分析は,筆者と保健科学で経験豊富な作業療法士と確認し行った.
結果:インタビューデータの総出語は3,418語であった.出現頻度は「eスポ―ツ」が38回で最も多く,「思う」は28回,「人」は20回,「感じ」は19回,「一緒」は14回の順に多かった.共起ネットワーク分析は,最小出現数3とし,品詞による語による取捨選択は規定値でおこなった.比較的強くお互いに結びついている5つのカテゴリーが抽出された.①地域企業の人と関係性をつくる楽しさは想像以上,②知らない人同士で集まり参加しても楽しい,③eスポーツは誰とでも一緒にできる,④会場で一緒に盛りあがった体験,⑤参加した職場の人とさらに良好な関係,となった.
考察:北米教育eスポーツ連盟(2021)は,教育支援ツールとして高等教育や初等教育にeスポーツを社会性・情動性を育てる社会的感情学習として取り入れている.本事例からも,eスポーツによって作業の可能化が促進され,地域の人と関係性をつくる環境や組織化に役立てていることが示唆された.作業療法では,eスポーツをきっかけとした高齢者・障害者が作業参加の促進が期待されている(田中;2019).eスポーツは,地域活性化に役立つ作業になりえる期待は高い.一方,アスリートと同様に怪我も想定されるので留意しなければならない(Robert et al; 2022).
課題:本研究は1事例の報告のため一般化することできない.しかしながら,eスポーツが作業になり得る期待を示した貴重なデータである.今後は,さらにデータを積み重ねていきたい.
倫理:本研究は群馬パース大学の研究倫理審査委員会(承認番号:PAZ21-45)の承認を得ており,ヘルシンキ宣言に基づき実施している.対象者の説明と同意は,口頭及び書面にて得ている.