第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-8] ポスター:地域 8

2023年11月11日(土) 11:10 〜 12:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-8-2] 地域課題解決型授業における作業療法学生の学習効果

黒田 健太 (学校法人 日本教育財団 首都医校)

【序論】
昨今,学生の意欲低下・学力低下は大きな課題である.当校の作業療法学科では今まで交流会やボランティア等と学業を組み込んできたが,うまく成果が上がってこなかった.経験学習論のコルブ¹⁾は,経験を多様な観点から振り返るが必要であると述べている.また,当校周辺の新宿地区は都会であるがゆえの地域のつながりの希薄さや外国籍の住民が多いなどの他の地域とは異なる特徴を呈している.
そこで,今回当校該当設立されている地域課題である「都営住宅の団地」の問題発掘から解決までを学生と団地住民で一緒に協業することができる機会を得た.この活動を学生と共にカリキュラムで組み込み振り返ることで学生への学習効果が期待できるかを検証した.
【研究目的】
本学科が2022年4月より開始した地域課題型授業が実習前の学生の医療的コミュニケーション・作業療法技能手技の学習効果の検証
【研究方法】
本学作業療法学科3年生で10名,某都営団地住民,新宿社会福祉協議会の3者にて「地域リハビリテーション演習Ⅱ」という当校オリジナルの授業科目を設定し,2022年4月~9月までの6ヶ月間プログラムを実施した.プログラムは主に活動前の第1フェーズ(事前学習・フィールド調査),第2フェーズ(グループ活動)第3フェーズ(ソーシャル・フィールドワーク)とした.今回は,第3フェーズでは,学生を中心とした住人への体力測定を準備から運営までを計画立てから実施し行った.体力測定は,血圧,握力,脈拍,長座体前屈,TUG,片脚立位,MMSE,E-SASを教員指導の元,測定した.学生へ活動前後にアンケートとインタビューを取り,高齢者とのコミュニケーション,作業療法技能,地域作業療法への興味についての聞き取りを行いSCAT分析にて検討した.〈研究倫理〉参加学生,対象となる住民には説明と同意を得,本研究と利益相反関係にある企業はない.
【結果の分析】
実施前の学生は,コミュニケーション技能に関しては学生により,得意~不得意がバラバラに分布していた.検査技術には自信を持っている・地域課題解決型の授業への取り組み意欲は低い傾向を示した.実施後アンケートの結果では,半数の5名はコミュニケーションへの苦手意識が向上した.検査技能に関しては,「思っていたよりも,検査に時間がかかった.検査は苦労した.実際の住民では,検査はうまくいかなかった.想像よりも検査実施が難しかった」と,検査前とのギャップを感じていた.
【結論】
今回の活動は学生に,コミュニケーションと検査技能に対する難しさを認識する機会となった.また,住民と課題を共感する経験から学生自身が対人支援についての気付きや振り返る機会となり得た.学校の授業とは違い,課題発掘から解決までを考えるプロセスは学生にとって,今までの学校の交流会やボランティアでは行うことができない経験学習を行う機会となり得た.
今回の活動を通して,学生への効果・変化を得ることができた.しかし新宿の課題解決には今回の活動のみでは至っておらず,今後は作業療法の視点を応用し地域の課題解決と学校教育の共創を継続したい.
(文献)
1)中原淳. "経験学習の理論的系譜と研究動向.".
2)元廣 惇ら"地域課題解決型授業の教育効果"作業療法2021 年 40巻