第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-8] ポスター:地域 8

2023年11月11日(土) 11:10 〜 12:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-8-9] 地域在住高齢者における生産的活動への参加状況とフレイルの関連

宮嶋 涼1,2, 横山 和樹3, 山 功恭2,4, 井平 光5, 池田 望3 (1.江別市立病院精神リハビリテーション室, 2.札幌医科大学大学院保健医療学研究科, 3.札幌医科大学保健医療学部作業療法学科, 4.医療法人大藏会 札幌佐藤病院, 5.札幌医科大学保健医療学部理学療法学科)

【序論】フレイルは,適切な介入による可逆性があるとされ,本邦においても対策が求められている.フレイルは,身体的,精神・心理的,社会的フレイルを含む包括的な概念であり,生活行為に焦点を当てる作業療法の対象となりうる.高齢者の社会参加は,productivityの理論に基づき,就労から要介護期のデイサービスの利用までの5つのステージの階層構造を持つとされ,ステージの移行は生活機能の変化で生じるとされている(藤原,2021).高齢者の生産的活動の参加状況とフレイルとの関連を明らかにすることは,地域在住高齢者のフレイルへの関連要因の理解に繋がり,より早期からのフレイル対策の一助になると考えられる.本研究では,地域在住高齢者の生産的活動への参加状況とフレイルとの関連を明らかにすることを目的とした.
【方法】2017年から2019年までに本所属が実施する地域在住高齢者を対象としたコホート研究(WHITE-3)に登録した620名に対して,2021年3月に郵送でのアンケート調査を実施した.アンケートの返送があった460名のうち,脳器質性疾患や認知症の既往をもつ者,要支援・要介護認定を受けている者,データに欠損のある者を除外し,分析対象とした.フレイルは基本チェックリストを用いて測定した.先行研究において,基本チェックリストの8点以上をフレイル群,4〜7点をプレフレイル群,3点以下をロバスト群と分類されている(Satake et al., 2016)が,本研究では,フレイル群とそれ以外の群との比較を行うため,7点以下を非フレイル群と定義した.生産的活動への参加状況の測定には,自記式作業遂行指標(SOPI)を用いて作業の統制,作業バランス,遂行満足度の3側面を,「1点:ほとんど満足にできていない」から「5点:とても満足にできている」の5件法で測定した(今井ら,2010).データ分析として,フレイルを従属変数(reference:非フレイル),SOPIの生産的活動を独立変数としたロジスティック回帰分析を作業の統制,作業バランス,遂行満足度の各側面ごとに実施した.調整変数は,年齢,性別,および独居とした.また,同様の分析を性別ごとに実施した.分析にはSPSS 27.0を使用し,有意水準は0.05とした.本研究は札幌医科大学倫理委員会の承認を得た.
【結果】分析対象は318名(平均年齢75.6±5.3歳,うち男性31.1%,独居31.8%)であり,非フレイル群275名(86.5%),フレイル群43名(13.5%)であった.調整変数を考慮した分析の結果,フレイル群は非フレイル群と比較して,生産的活動において,作業の統制(OR:0.73, 95%CI:0.56-0.95),作業バランス(OR: 0.68, 95%CI:0.52-0.90),遂行満足度(OR:0.65, 95%CI:0.50-0.86)が有意に低かった.性別ごとの解析では,男性では,フレイル群は非フレイル群と比較し,作業の統制(OR:0.42, 95%CI:0.22-0.78),作業バランス(OR: 0.36, 95%CI:0.18-0.72),遂行満足度(OR:0.43, 95%CI:0.23-0.79)が有意に低かった.女性では,3側面すべて有意な関係はみられなかった.
【考察】本研究より,フレイル群は,非フレイル群よりも生産的活動において,作業の統制,作業バランス,遂行満足度の3側面全てが有意に低く,性別ごとの解析では男性に有意な関連がみられた.したがって,地域在住高齢者では,生産的活動がフレイル予防に関連していること,特に男性に対する生産的活動への支援が重要であることが示唆された.また男性で生産的活動の3側面すべてがフレイルと有意な関係がみられたことから,地域在住高齢者が「自ら選択し,活動や休息を考慮しながら,満足ができる」生産的活動を遂行できることを作業療法士が支援する意義が示唆された.