[PN-9-4] 地域在住高齢者における呼吸機能と握力の関係
【はじめに】
呼吸機能の低下は,運動耐久性を低下させるだけでなく,廃用症候群や肺炎のリスクを増大することが知られている1).しかしながら,呼吸機能の低下は日常生活上で意識しづらく,かつ測定するにも専用の医療機器が必要であるといった問題がある.一方,握力は全身筋肉量との関係は報告されており,測定も簡便である.よって握力から呼吸機能を推定できれば,地域作業療法においても,簡易的に呼吸機能の低下を把握することが可能となり,早期に効果的作業療法の介入が可能となる.そこで今回は,地域在住高齢者における握力と呼吸機能の関係性について検討することにし,効果的握力を維持・増強する作業療法の開発によって呼吸機能の維持と改善につながることを期待する.
【方法】
ヘルシンキ宣言に基づき,本研究の目的を理解し,調査方法を同意した神戸市内の地域在住高齢者27名(平均年齢:75.85±6.16歳)(女性15名,男性12名)を対象に,握力検査とスパイロメータ検査を行った.自己記入式調査により,呼吸器疾患の診断を受けている者,既往を持つ者は除外した.握力は 2 回測定し,最大値を採用した.呼吸機能は電子式診断用スパイロメータ(ミナト医科学社オートスパイロ307)を用いて,努力性肺活量(FVC),一秒量(FEV1.0),一秒率(FEV1.0%)を測定した. 他の影響因子を把握するため,健康・栄養・嚥下パラメータとして,BMI・唾液空嚥下テスト(RSST)・簡易栄養状態評価表を用いた.なお,本研究は筆頭者所属機関の倫理審査を得た.
【結果】
対象者利き手最大握力は平均29.01±8.80㎏であり,FVCの平均値は2.60±1.07であった.利き手最大握力とFVCの間に正的相関関係が認められた(r=0.67,p<0.05).BMIの平均値は23.32±3.73であり,簡易栄養状態の平均点数は22.51±2.99であった.BMIと簡易栄養状態にも正的相関関係が示された(r=0.70, p<0.05).
【考察】
対象者27名の握力と呼吸機能検査を行った結果,握力とFVCの正の相関関係性が示された.握力は全身の筋肉量と相関があり,その測定には全身の筋収縮が総動員される.努力呼気測定においても,特に腹部の筋力が求められるため,この2つに相関性があることが示されたと推察する.今後,対象者の追加を行い,握力をターゲットとする効果的な作業療法の開発によって,呼吸機能の維持と改善につながることを期待する.なお,BMIと簡易栄養状態評価表の結果にも正の相関があることで,握力と合わせて身長と体重を定期的に計測することにより高齢者の栄養状態と呼吸機能を簡易に知ることができ,地域で提供する作業療法のあり方を検討する際の根拠にもなると考える.
【結論】
地域在住高齢者に対して,握力を測定することで呼吸機能もある程度推測することが可能だと考える.
文献
1)平成27年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について:スポーツ庁https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/tairyoku/kekka/k_detail/1377959.htm
2)循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業 身体活動・不活動量・運動量の実態とその変化が生活習慣病発症に及ぼす影響と運動介入支援の基盤構築に関する研究.平成26年度総括・分担研究報告書2015.
呼吸機能の低下は,運動耐久性を低下させるだけでなく,廃用症候群や肺炎のリスクを増大することが知られている1).しかしながら,呼吸機能の低下は日常生活上で意識しづらく,かつ測定するにも専用の医療機器が必要であるといった問題がある.一方,握力は全身筋肉量との関係は報告されており,測定も簡便である.よって握力から呼吸機能を推定できれば,地域作業療法においても,簡易的に呼吸機能の低下を把握することが可能となり,早期に効果的作業療法の介入が可能となる.そこで今回は,地域在住高齢者における握力と呼吸機能の関係性について検討することにし,効果的握力を維持・増強する作業療法の開発によって呼吸機能の維持と改善につながることを期待する.
【方法】
ヘルシンキ宣言に基づき,本研究の目的を理解し,調査方法を同意した神戸市内の地域在住高齢者27名(平均年齢:75.85±6.16歳)(女性15名,男性12名)を対象に,握力検査とスパイロメータ検査を行った.自己記入式調査により,呼吸器疾患の診断を受けている者,既往を持つ者は除外した.握力は 2 回測定し,最大値を採用した.呼吸機能は電子式診断用スパイロメータ(ミナト医科学社オートスパイロ307)を用いて,努力性肺活量(FVC),一秒量(FEV1.0),一秒率(FEV1.0%)を測定した. 他の影響因子を把握するため,健康・栄養・嚥下パラメータとして,BMI・唾液空嚥下テスト(RSST)・簡易栄養状態評価表を用いた.なお,本研究は筆頭者所属機関の倫理審査を得た.
【結果】
対象者利き手最大握力は平均29.01±8.80㎏であり,FVCの平均値は2.60±1.07であった.利き手最大握力とFVCの間に正的相関関係が認められた(r=0.67,p<0.05).BMIの平均値は23.32±3.73であり,簡易栄養状態の平均点数は22.51±2.99であった.BMIと簡易栄養状態にも正的相関関係が示された(r=0.70, p<0.05).
【考察】
対象者27名の握力と呼吸機能検査を行った結果,握力とFVCの正の相関関係性が示された.握力は全身の筋肉量と相関があり,その測定には全身の筋収縮が総動員される.努力呼気測定においても,特に腹部の筋力が求められるため,この2つに相関性があることが示されたと推察する.今後,対象者の追加を行い,握力をターゲットとする効果的な作業療法の開発によって,呼吸機能の維持と改善につながることを期待する.なお,BMIと簡易栄養状態評価表の結果にも正の相関があることで,握力と合わせて身長と体重を定期的に計測することにより高齢者の栄養状態と呼吸機能を簡易に知ることができ,地域で提供する作業療法のあり方を検討する際の根拠にもなると考える.
【結論】
地域在住高齢者に対して,握力を測定することで呼吸機能もある程度推測することが可能だと考える.
文献
1)平成27年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について:スポーツ庁https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/tairyoku/kekka/k_detail/1377959.htm
2)循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業 身体活動・不活動量・運動量の実態とその変化が生活習慣病発症に及ぼす影響と運動介入支援の基盤構築に関する研究.平成26年度総括・分担研究報告書2015.