第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-9] ポスター:地域 9

2023年11月11日(土) 12:10 〜 13:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-9-9] 地域と出会うには

中塚 翔三 (砥部病院ケアサービス株式会社介護付有料老人ホームTo-be)

はじめに
 作業療法士として,地域をコーディネートというよりも「楽しく暮らす」と思ったきかっけが「地域に作業療法士として出てみよう」と感じたことである.それは,少子高齢化と過疎化の進行により,地域での楽しみや人との関りが減少しつつあり危惧したからである.私の地域は,山間部の川が流れる谷間の村であり,人流は少なく,同じ人たちが住み続けている.それもあってか,内向的な思考の持ち主が多く「よそ者」といった人と違うことを犬猿する.また,過去の対人関係を引っ張りながら暮らしている.それらの,しがらみや「生きづらさ」をどうにかしたかったのも理由の一つである.初めに地域とつながるため町の保健師と会談するが,作業療法士が何を専門としているか全く知らなかったのである.そして口頭で説明するが,理解できなかった様子で,その後も連絡が無かった.そのため,フライヤーを作成し作業療法士が「できること」をまとめ,次の市町村へ連絡する.その市町村というのは,西日本豪雨災害にあった愛媛県西予市である.地元を飛び出し他市町村へ電話連絡したせいか,担当者からは「何で地元じゃないんですか」と言われる始末であったが,会談することになる.フライヤーを見て貰いながら作業療法士の専門性を説明すると「こんな沢山のことができるんですね」と驚かれ,地域で開催される会に共に参加し,積み重ねるうちに災害支援の依頼までと信頼関係を築くことができている.その後,地元介護課の方に説明することで,サロン活動への依頼などつながっている.地域と関わるためには,作業療法士が何をできることの説明と,知った顔の関係作りが大切である.
活動経過
 地域活動歴を下記に述べていきたい.2015年地域支援として「なんよOT」という有志会を結成.現在は34名となる.地域活動は,認知症サポーター養成講座,認知症徘徊模擬訓練,西日本豪雨災害支援などに参加する.2017年地域おこし協力隊と出会いゲストハウス作りを行う.ゲストハウスを居場所として,様々な人が訪れ共感できる仲間や癒しを求める場所となる.いつのまにか作業療法士として,ゲストハウスが相談の場となる.相談は,障がい者への理解と関り方,生きづらさを抱えて悩んでいる方など,状況を聞き整理することで安心感が持てるよう助言を行う.また,地域おこし協力隊を介しての依頼や相談もある.2021年地域でのホースセラピー活動.馬を知る(解剖や習性)の研修会への参加から始まる.対象者はこどもから高齢者と幅広く精神,発達障がいの地域の方々にこころとからだのケアを行う.馬のお世話をすることで対人関係や社会性の向上.乗馬をすることで自己優越間,五感への刺激,身体面の向上を図る.2022年卓球バレーを愛媛県にと,地域へ体験会を開催し啓発活動を支援する.障がいの有無・程度・種別,また年齢に関わらず誰でも一緒にプレーでき,気軽にできるスポーツとして活動を広めている.
まとめ
 これからの経済活動は,職業がロボットに移行し,より高度な人材を求める時代となる.また,経済と福祉は密接であり支援が減少する可能性がある.これからの社会は個人能力が低い場合,働けず貧困となる可能性が高い.そのなかで「生きがい」はどうであろう.人々の「生きづらさ」が顕著になるのではないだろうか.そのため,病院や施設という箱庭の中で無く,活動する場を地域に作り支援の幅は広げる.そして,医療や福祉からこぼれる人々と地域で共に「生きがい」を楽しみ,暮らし続けることが地域課題と考える.そのため,市町村単位で作業療法士を配置し,多様性のある視点から支援をする事が重要と思われる.