第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

理論

[PO-1] ポスター:理論 1

2023年11月10日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (展示棟)

[PO-1-2] カナダ作業遂行測定に起こるバイアスの出現頻度の検討

若林 実里1, 加藤 萌1, 澤田 辰徳2 (1.IMSグループ イムス板橋リハビリテーション病院リハビリテーション科, 2.東京工科大学 医療保健学部 リハビリテーション学科作業療法学専攻)

【はじめに】
カナダ作業遂行測定(Canadian Occupational Performance Measure:COPM)があるが,その信頼性や妥当性の問題および一定のバイアスがあることが明らかになっている. COPMを効果的に使用するためには,どのようなエラーが多いかを明らかにすることは重要である.本研究の目的は過去の報告に示されたCOPMのバイアス(エラー)の種類について,事例コードマトリックス法を利用してその傾向を明らかにすることである.尚,本研究における計画は東京工科大学の倫理委員会の審査を受け,承認を受けている.(承認番号E18HS-004)
【対象】
当院に入院中のクライエントで初回評価時にCOPMを実施したものかつMini Mental State Examinationの値が20点以上で同意が得られたものとし,人数は先行研究Sawadaら(2022)で理論的飽和が得られた20名とした.
【方法】
クライエントにはCOPM実施後24時間以内にインタビューを行った.インタビューガイドは次の3つで構成した.第一は,各作業の遂行度と満足度の採点理由について.第二は,採点結果についてどう思うか.第三は,採点結果について作業療法士との間にギャップを感じたかとした.インタビュー内容をもとに逐語録を作成し,4名が独立してトピックごとにラベル化した.ラベルは質的研究の事例コードマトリックス法に準拠して横軸に事例を,縦軸にSawadaら(2022)により報告されたCOPMのバイアス15項目を置きマトリックス表を作成した.分析においてはNvivoを利用し,分類に利用した.
【結果】
対象の平均年齢は65.9±18.7歳(51-93歳)で,男性13名女性7名であった.項目ごとの出現頻度を算出すると遂行度のバイアスは〈予想採点〉が16事例(80%)であり,〈CL中心の概念の理解不足〉〈適当採点〉が5事例(25%),〈重要度と遂行度・満足度との混乱〉〈天井効果〉が4事例(20%),〈意味のある作業の誤理解〉〈期待度採点〉が3事例(15%),〈作業の誤理解〉〈作業の複合化〉〈目標値採点〉〈思いやり採点〉〈選んだ作業の置き換え〉が2事例(10%),〈感情採点〉〈謙遜採点〉〈採点忘れ〉が1事例(5%)であった.
満足度は〈予想採点〉が10事例(50%),〈適当採点〉が7事例(35%),〈CL中心の概念の理解不足〉が5事例(25%),〈天井効果〉が4事例(20%),〈意味のある作業の誤理解〉〈期待度採点〉が3事例(15%),〈作業の誤理解〉〈作業の複合化〉〈重要度と遂行度・満足度との混乱〉〈目標値採点〉〈謙遜採点〉〈点数忘れ〉が2事例(10%),〈感情採点〉〈選んだ作業の置き換え〉が1事例(5%)であった.遂行度,満足度ともに予想により高く採点するバイアス〈予想採点〉が最大であったが,すべて発症後に作業が未経験であった.また,対象とした20事例のうち19事例で遂行度満足度どちらかでバイアスが発生しており,バイアスがないものは1事例のみであった.
【考察】
 COPMは成果指標の一つとして用いられるが,Ohnoら(2021)により信頼性と妥当性への懸念が報告されている.本結果はCOPMに起こりやすいバイアスの種類を明らかにしており,その点に留意をすることで正確な測定ができる可能性が示唆された.