第57回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-2] ポスター:管理運営 2

Fri. Nov 10, 2023 12:00 PM - 1:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PQ-2-1] 作業療法士が作るクリニカルパスの効果と病床運営の関連について

藤末 隆1, 内田 明宏2, 石田 郁子3, 内田 研4 (1.医療法人 博慈会 内田病院リハビリテーション部, 2.医療法人 博慈会 内田病院消化器内科, 3.医療法人 博慈会 内田病院血液内科, 4.医療法人 博慈会 内田病院整形外科)

【はじめに】
クリニカルパス(以下,パス)は医療の質と効率化を目指して作成されたマネジメントシステムである.パスにはアウトカムと呼ばれる達成目標が定められ,日々の患者の臨床結果を評価していく仕組みとなっている.作業療法士(以下,OT)は,対象者の機能とADLを様々な視点から捉え,その人らしい生活を総合的にみることができる職種である.当院では,そのようなOTの専門性を活かし,OTが中心となって各種パスを作成しており,いずれのパスも院内ADLの達成度を主要アウトカムとしている.今回,OTが作成した主要パスを使用した病床運営データを分析することで,OTだからこそ作れるパスの効果と病床運営の関連性が明確となったため,その過程を報告する.
【目的】
当院においてOTが中心となり作成した主要パス(5疾患25種類)の病床運営データを後方視的に分析することで,OTが作るパスの効果と病床運営の関連性を明確化し,病床運営におけるOTの専門的介入の可能性を見つけることとする.
【方法】
当院における過去3年間の病床運営データを後方視的に分析し,パス適用率と院内全体の退院遅延率の関連性と,パス適用群と非適用群の2群における退院遅延率の関連性を算出した.対象は2019年4月から2022年3月までの入院患者2686例と主要パス使用患者404例.入院時に医師が入院診療計画書に入力する推定入院期間の末日を退院目標日とし,その日数を超過した場合を退院遅延として算出した.なお,統計学的解析はEZR version4.2.2(64-bit)を使用し,検定にはPearsonの積率相関係数とwelchのt検定を用いた.有意水準は5%未満とした.
【結果】
パス適用率は,2019年度=15.44%,2020年度=18.58%,2021年度=19.57%と年々増加傾向なのに対し,退院遅延率は2019年度=42.14%,2020年度=34.42%,2021年度=29.25%と年々低下しており,パス適用率と院内全体の退院遅延率の間において負の相関を認めた(r=-0.55,p=0.001).また,パス適用群の退院遅延率は,2019年度=16.48%,2020年度=4.53%,2021年度=5.93%に対して,非適用群の退院遅延率は,2019年度=38.12%,2020年度=39.15%,2021年度=35.18%であり,パス適用群と非適用群の2群における退院遅延率の比較において有意な差を認めた(p=0.01).
【考察】
分析結果から,パス適用率が上がれば院内全体の退院遅延率が低下すること,パス適用群で有意に退院遅延率が低下することが明らかになった.これらはアウトカム順守に基づいたパス運営と退院支援の結果であり,アウトカムの内容や設定時期が退院遅延率低下に影響を与えていることが示唆された.また,入院中のADL達成度を主要アウトカムにすることは,医療者にも患者にも目標や達成度がわかりやすく,患者参加型の医療マネジメントを展開しやすいという利点が生まれるのではないかと考える.OTは患者の身体的・精神的機能とADLを様々な視点から捉え,予後予測をしながら退院支援を行っていける専門職であり,ADL達成度を主要アウトカムとするパスの作成には最適な職種であり,今後の病床運営において活躍が期待できる職種であることが示唆された.
【おわりに】
今後もパスにおいて,OTの専門的視点から見た院内ADLの達成度を検討し,適切なアウトカム設定を行っていくことで,患者満足度の向上と更なる病床運営の効率化を目指していきたい.