第57回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-6] ポスター:管理運営 6

2023年11月11日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示棟)

[PQ-6-1] 就労支援機関管理者におけるストレスの現状

大川 浩子1,2, 本多 俊紀2, 宮本 有紀3 (1.北海道文教大学人間科学部作業療法学科, 2.NPO法人コミュネット楽創, 3.東京大学大学院医学系研究科精神看護学分野)

【はじめに】近年,作業療法士が就労支援施設の運営・管理に携わる機会が増えてきている.しかし,就労支援領域の管理者については,障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会報告書(厚労省,2021)に,サービス管理責任者に対する就労支援の専門性向上の方法を検討する必要性が触れられたのみである.
 そこで,我々は就労支援機関管理者から見た人材育成の現状と課題を検討する目的で,全国の就労支援機関の管理者を対象にアンケート調査を行った.今回,管理者のストレスに注目した分析結果を報告する.なお,本研究は本学の倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:01014)
【方法】対象は就労移行支援,就労継続支援(A・B型),障害者就業・生活支援センター(以下,ナカポツ)を運営する就労支援機関1200カ所の管理者である.まず,ナカポツは厚労省,他はWAMNETの情報を参照に,各300ヵ所をランダムに抽出した.その後,依頼文書と調査票を郵送し,返送をもって本研究へ同意したものとみなした(調査期間:2020年2月~4月).調査票には回答者・所属機関の基本情報,所属機関における就労支援や人材育成の課題に加え,職業性ストレス簡易調査票(57項目)(厚生労働省),及び,仕事に関連するポジティブで充実した心理状態(厚労省,2019)であるワーク・エンゲイジメント(以下,WE)を測定するUWES-J(Utrecht Work Engagement Scale)短縮版(Shimazu A,et al,2008)を含めた.
 分析手順では,労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(厚労省,2021改定)に従い,職業性ストレス簡易調査票の合計得点より高ストレス者を判断した.その後,高ストレス者群と非高ストレス者群で基本属性,就労支援・人材育成の課題ごとの割合の違いをχ 2 検定,WEの値はMann-Whitney のU 検定をSPSSver.29で行った(p<0.05).
【結果】無効回答等を除いた回収率は39.3%(467カ所)であり,職業性ストレス簡易調査票及びUWES-J短縮版の回答に欠損を認めた分を除いた372カ所(31.0%)の管理者を分析対象とした.回答管理者の属性は男性206名(55.4%),女性164名(44.1%),無記入2名(0.5%),年代は40代が158名(42.5%)と最も多く,所属機関は訓練等給付事業所278名(74.7%),ナカポツ94名(25.3%)であった.
 高ストレス者は53名(14.2%)であり,所属機関・回答者の基本属性の割合では有意差が認められず,現職の継続意向で高ストレス者群は非高ストレス者群より継続への意欲が低下している割合が有意に高かった(13.2%,5.3%).また,就労支援の課題における教育システムの課題(30.2%,17.9%),人材育成における課題のシステムの課題(20.8%,6.9%)では高ストレス者群で該当すると回答した割合が有意に高かった.なお,WEは両群で有意差を認めなかった(3.08±1.23/3.39±1.08).
【考察】今回,両群でWEの値に有意差が認められなかった.高ストレス者群で離職意向が高まる者は微増するが,非高ストレス者群と比較し,仕事に関するポジティブで充実した心理状態には大きな差がないと思われた.また,高ストレス者群では所属機関の職員教育に関する教育システムや人材育成の課題について該当割合が高くなることから,所属機関の職員教育が負担になっている可能性が考えられた.なお,本研究はJSPS科研費JP19K02163の助成を受けている.