第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

教育

[PR-1] ポスター:教育 1

2023年11月10日(金) 11:00 〜 12:00 ポスター会場 (展示棟)

[PR-1-3] 作業療法士の基本属性および臨床・教育・研究の経験とEBPSAとの関連

増田 雄亮1, 八重田 淳2, 會田 玉美3 (1.湘南医療大学保健医療学部リハビリテーション学科, 2.筑波大学大学院人間総合科学学術院, 3.目白大学大学院リハビリテーション学研究科)

【序論】
 アジア圏の作業療法分野においてEvidence-Based Practice(以下,EBP)は概念としての普及に留まっており,EBPを促進する方策に関する実証的な研究は,未だに乏しい現状である.そこでわれわれは先行研究において,疫学的な調査を可能にするためのEBP自己評価尺度(以下,EBPSA)を開発した.EBPSAは,職場環境),内発的動機,自己効力感,結果予期という4因子14項目で構成されており,高い内的整合性と構造的妥当性が確認されている.
【目的】
 本研究は,作業療法士の基本属性および臨床・教育・研究の経験とEBPSAとの関連を明らかにすることを目的とした.本研究を通して,作業療法士のEBPを促進するための具体的な方策に繋がる展開が期待できる.
【方法】
 本研究は,日本において回復期リハビリテーション病棟を有する1216病院に勤務する各病院1名の作業療法士(計1216名)を対象として,郵送法による質問紙調査を実施した.回収期間は,2020年6月1日~同年6月30日に設定した.質問紙は,基本属性,臨床・教育・研究の経験,EBPに関する質問の3部構成とした.基本属性は,臨床経験年数,最終学歴,生涯教育制度の進捗状況などについて回答を求めた.臨床・教育・研究の経験は,先行研究(Thomas A, et al, 2013)に基づき,臨床研究の実施経験,研究に対する肯定的な経験,学会発表をした経験など計12項目から構成し,経験の有無について2段階で回答を求めた.EBPに関する質問は,EBPSAを使用し,7段階(1. 全くそう思わない~7. とてもそう思う)で回答を求めた.統計解析は,基本属性とEBPSAとの関連,臨床・教育・研究の経験とEBPSAとの関連について対応のないt検定を実施し効果量(d)を算出した.統計ソフトはIBM SPSS Statistics 26.0Jを使用し,有意水準は全て5%未満とした.なお,本研究は,T大学研究倫理委員会の承認を得ている(第東2019-76号).
【結果】
 531名(回収率43.7%)の作業療法士から回答が得られ,このうち全ての質問項目に回答があった465名を有効回答とした.EBPSAスコアは,内発的動機が5.72±0.92,結果予期が4.93±0.96と高い値を示した一方で,自己効力感が4.33±1.02,職場環境が3.99±1.29であり相対的に低い値を示した.自己効力感と職場環境の双方と高い関連を認めた項目としては,臨床研究の実施経験と研究に対する肯定的な経験が挙げられた(p<.01, 0.5<d).作業療法士の基本属性においては,最終学歴と職場環境との関連(p<.01, d=.26),生涯教育制度の進捗状況と職場環境(p<.01, d=.25),生涯教育制度の進捗状況と自己効力感との関連(p<.01, d=.36)が確認された.
【考察】
 EBPSAにおいて,自己効力感と職場環境は相対的に低い値を示していることから,EBPを促進していくために今後の課題となる内容を含んでいるものと推察される.これらを向上していくためには,生涯教育制度に参加することに加えて,作業療法士の研究活動を推奨することや臨床研究を実施しやすい職場環境を整備していくことが今後の重要な課題であると考えられる.