第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-10] ポスター:教育 10

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PR-10-5] 当院での調理動作訓練における介入視点の調査

竹内 章子, 栗谷 明至, 山本 紘平 (医療法人幸生会 琵琶湖中央リハビリテーション病院リハビリ療法部)

【序論】
脳卒中片麻痺者の在宅生活における応用的生活行為への介入に,家事動作が挙げられる.中でも調理動作は各家庭の作法や文化・生活習慣が色濃く反映するものであり,自立支援に向けて,より対象者の生活に沿った関わりが,作業療法士(以下,OTR)として必要である.しかし,身体障害領域である回復期リハビリテーション病棟においては,ADLの改善が主目標となることが多い.一方,特に女性を中心に退院後の調理への希望や不安の声が聴かれる.当院では,昨年度より生活シミュレーションルームを新設し,退院後の様々な状況を想定した訓練を行っているが,適切な評価・介入には一定の知識や経験が必要であり,若手OTRが難渋する場合が多い.調理動作訓練における若手OTR・熟練OTRの認識の違いを明確にすることは,医療の標準化・若手OTRへの適切な指導の観点から必要と考える.
【目的】
当院OTRにインタビュー形式で聞き取り調査を行い,調理動作訓練時に着目する評価・介入点について,経験年数による認識の違いを明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】
対象:2023年1月~2023年2月の期間に在籍の当院OTR.内訳は,経験年数別に若手群10名(1-3年目,男性3名・女性7名,平均年齢は24.2歳±1.5歳),熟練群10名(10-26年目,男性4名・女性6名,平均年齢は39.4歳±6.6歳).
方法:模擬患者を設定し,「想定される困りごと」「調理動作の評価・介入点」を含む内容について,当院生活シミュレーションルームにて,対象に約20分間の半構造化インタビューを実施した.次に,録音した内容を文書化し,KH Corder3を用いてテキストマイニングによる分析を行った.分析は,出現頻度の高い語の抽出や共起ネットワークの作成を行い,2群間での特徴を比較した.なお,本報告は当院倫理委員会の承認を得ている.また,開示すべき利益相反の関係にある企業はない.
【結果】
総抽出語は若手群「5529」熟練群「10699」となった.両群「動作」を中心に「課題」との繋がりが示されたが,若手群は「包丁」「物」「使う」といった具体的な物品操作に関する頻出語,それに対して熟練群は「調理」「人」といった患者の背景を含めた調理動作全般に関する頻出語との強い繋がりを示した.熟練群の頻出語である「人」について語の使用方法を確認すると,「この人の場合は」「この人は何のメニューが好きか」等,模擬患者の個人因子に関与する使用が多く認められた.
【考察】
WFOTは作業療法の定義にて「作業療法はクライエント(以下,CL)中心の保健専門職」とし,CL中心であることを強調している.本調査において,若手群は物品操作,熟練群はCLに関する頻出語が多く確認されたことが特徴的であった.若手群はADL改善が優先されやすい現場で,特に「人」の要素について考える機会が少なく,調理動作の課題としてイメージしやすい「包丁」へ着目したと思われる.一方熟練群は,過去の経験の蓄積が定義への理解および日頃からの実践につながったと考えられる.総抽出語や共起ネットワークにおける両群の差は,これらが影響したものと推察される.今後は調理動作以外の生活行為についての調査の実施や,OTRとしてCLに着目した介入を行っていくための若手OTRへの教育方法も検討していきたい.