第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-2] ポスター:教育 2

2023年11月10日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (展示棟)

[PR-2-3] クリニカルリーズニングに着目した作業療法実習が学生に与える影響

古田 憲一郎, 青木 海 (医療法人社団 苑田会 竹の塚脳神経リハビリテーション病院)

【はじめに】作業療法のクリニカルリーズニング(以下, CR)は「安全で質の高いケアを提供できるかどうか」に影響するため, CRの体系的な使用は「責任のある, かつ費用対効果の高い実践」を支えている1). CRは卒前教育から発達が進んでおり, 卒然教育におけるCRの成長には臨床実習が欠かせない.
【目的】本報告の目的は, CRに着目した作業療法実習が作業療法学生のCRに与える影響を分析することである.
【方法】対象は当院に臨床実習に来たA大学作業療法学科の臨床実習生(以下, OTS)1名である. OTSは20歳代前半の女性であり, 過去の臨床実習は全て病院・施設で行うことができていた. 実習期間は8週間であり, クリニカルクラークシップ(以下, CCS)に基づき事例基盤型実習とした. 具体的には, 1. 事例への介入・振り返り, 2. 思考過程の整理, 3. 報告内容の討論とそれらに対する臨床実習指導者(以下, CE)と補助者からの助言や指導, 4. 事例報告の書き方指導であった. なお, 事例報告の書き方指導は学術誌「作業療法」の事例報告を活用し指導を行った. CEは10年目の作業療法士であり, 厚生労働省指定の臨床実習指導者講習会を修了している. なお, 本発表に際し, 本人に口頭で説明し同意を得ている. 今回の実習は, 作業療法のクリニカルリーズニング自己評価尺度(SA-CROT)2)を用いてOTSのCRの状況を確認した. SA-CROTは14項目の5段階評価尺度であり, 実習前後でのOTSのCRを把握することができる. 得られたスコアをlogit値に変換した後, 前後のlogit値の差を各スコアのlogit値の誤差の和と比較することにより, SA-CROTの変化の有無を確認することができる. なお, 実習前のスコアは, 「科学的根拠を活かす:7/20点」「対象者のナラティブを活かす:8/20点」「専門職の倫理を活かす:6/15点」「実践の文脈を活かす:6/15点」合計27/70点(OTSの平均的なSA-CROTスコア32.2±6.3)であり, logits-4.27, 標準誤差(以下, SE)0.56であった. OTSが変えたいと思う項目は「文献の内容に照らした対象者の状態」「対象者または家族が今後の生活についてどのように考えているか」「作業療法場面に応じた扱う活動の選択理由」であった.
【結果】SA-CROTの実習後のスコアは, 「科学的根拠を活かす:12/20点」「対象者のナラティブを活かす:12/20点」「専門職の倫理を活かす:9/15点」「実践の文脈を活かす:9/15点」合計42/70点であり, logits0.28, SE0.60であった. OTSが今後変えたいと思う項目は「他の作業療法士が立案した計画」「対象者が重要な作業にどのくらい関わることができているか」「対象者の生活場面で考えうるリスク」であった.
【考察】今回の実習前後で(最終のlogits0.28)-(初期のlogits-4.27)>(最終のSE0.60)+(初期のSE0.56)であったことから, OTSは有意にCRの自己評価が向上したと考えられる. 特に「科学的根拠を活かす」の項目では5点と最も変化量が多く, 従来の事例基盤型実習に加えて事例報告の書き方指導を行ったことがOTSのCRの自己評価に寄与したと考える.
【参考文献】
1)Cronin Clinical Reasoning in Occupational Therapy. AOTA Press, 2018. doi: 10.7139/2017.978-1-56900-480-7
2)丸山祥, 宮本礼子, ボンジェペイター: 作業療法のクリニカルリーズニング自己評価尺度(SA-CROT)の妥当性と信頼性の検討. 作業療法 41(2): 197-205, 2022