第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-2] ポスター:教育 2

2023年11月10日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (展示棟)

[PR-2-7] 作業療法学専攻学生の対面授業とオンライン授業受講によるストレスと個人特性との関係

田中 真, 小山内 隆生, 加藤 拓彦, 和田 一丸 (弘前大学大学院保健学研究科)

【はじめに】
近年わが国では,COVID-19の世界的な拡大により学校教育ではオンライン(以下OL)授業が導入され,生活習慣や学業などに様々な変化を余儀なくされている.コロナ禍における一般大学生の対面またはOL授業下でのストレスの特徴は,学年や個人特性によって違いがあることが明らかになっているが,その他にも授業形式の違いにより学生が感じるストレスの内容や度合いが異なること,またそれらの違いは学生個人の心身状態といった個人特性も影響していると考えられた.そこで本研究では,作業療法学生の授業形式によるストレスの感じ方が,対面授業とOL授業でどのように違うのか,また,その違いは学生のどのような個人特性が関係しているのかを明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】
 研究の対象は,コロナ禍の2020年から2021年にかけて対面授業とOL授業を相互に経験した大学生うち本研究の趣旨に同意が得られた者60名である.学生には自己記入方式アンケートを実施した.アンケート内容は,講義・演習・実習の授業形式ごとに,過去に体験した対面及びOL授業のストレスの度合いをVisual Analogue Scale(以下VAS)を用いて測定した.学生の個人特性として,性格特性の評価は「批判性」「養育性」「円熟性」「合理性」「自然性」「直感性」「適応性」の7領域,計84の質問からなる「自我態度スケール(Ego Aptitude Scale以下EAS)」を使用した.また学生が抱える不安の評価は「日常生活不安」「評価不安」「大学不適応」の3領域,計30の質問からなる「大学生活不安尺度(College Life Anxiety Scale以下CLAS)」を用いた.対面授業とOL授業とのストレスの度合いの比較は対応のあるt検定,授業形態ごとのストレス高群・低群における各個人特性評価尺度の合計得点及び各領域合計点の比較にはMann-WhitneyのU検定を用いた.いずれも危険率5%未満を有意とした.本研究は弘前大学大学院保健学研究科倫理委員会の承認を経て実施した(整理番号:HS 2022-064).
【結果および考察】
 対面及びOL授業のストレスの度合いを比較した結果,授業全般及び講義形式において有意差が認められ,いずれにおいてもOL授業に比べ対面授業のストレスが有意に高かった(p<0.01).授業形態ごとにストレスのVAS値上位25%をストレス高群,下位25%をストレス低群に分類し,EAS及びCLASの合計得点を比較した結果CLASのみ有意差が認められ,講義対面と演習対面に対するストレス高群はストレス低群に比べてCALS合計得点が有意に高かった(p<0.05).授業形態ごとのストレス高群・低群のEAS各領域得点を比較した結果,演習OLのストレス高群はストレス低群に比べてリーダーシップに優れているといった特性を持つ「批判性」,ありのままの自然な自分を表出することが得意といった特性を持つ「自然性」の領域得点が有意に高かった(p<0.05).CLAS各領域得点を比較した結果,講義対面に対するストレス高群は低群に比べて,自己の能力に対する評価への不安である「評価不安」得点が有意に高かった(p<0.05).また,全般対面,講義対面,演習対面に対するストレス高群は低群に比べて,大学に適応できていない事による不安である「大学不適応感」得点が有意に高かった(p<0.05).以上の事から,今回調査した作業療法学生は特に対面の講義形式の授業にストレスを感じやすく,他者からの評価に不安を感じる学生は対面の講義形式の授業に,リーダーシップをとりたい学生や自然な自己表現が特異な学生はOLの演習形式の授業にストレスを感じやすいことから,これらの個人特性に配慮し授業環境を整えることが重要だと考えられた.