第57回日本作業療法学会

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教育

[PR-3] ポスター:教育 3

2023年11月10日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (展示棟)

[PR-3-4] 国家試験対策が作業療法学生に与えるストレスについて~唾液アミラーゼモニター,学習動機づけの評価を用いて~

奥谷 研, 橋本 絢大, 坂口 雄哉 (兵庫医科大学リハビリテーション学部)

【はじめに】作業療法士になるためには国家試験に合格することが必要であり,作業療法士養成校には,卒業時に学生の学力を国家試験の合格水準に到達させることが求められている.国家試験対策学習が上手く進まない学生の特徴として,学習動機づけが低いこと,学習によって生じたストレスを上手く発散できない可能性があると推測された.したがって,本研究では,作業療法士国家試験の受験を予定している大学生のストレス状態及び国試対策学習への動機づけの様式を評価し,特徴の把握と指導方法を検討することを目的とした.
【方法】作業療法士国家試験の受験を控えた47名を対象に,国家試験対策模擬試験(以下,模試)の平均点より上の学生群(以下,平均上群)と模試の平均点より下の学生群(以下,平均下群)に分類した.ストレス状態の評価は,唾液アミラーゼモニター(CM-3.1,ニプロ社製)を使用した.さらに,学習動機づけをアンケートで評価した.評価は,模試の約1か月前に1回目(以下,1回目),模試の約2週間前に2回目(以下,2回目),模試の1-2日前に3回目(以下,3回目)を実施した.本研究は兵庫医科大学倫理委員会の承認を得て実施された.
【結果】唾液アミラーゼは,平均上群では,1回目で29.00 kIU/L,2回目で21.00 kIU/L,3回目で14.00 kIU/Lであり,3回目は1回目及び2回目の評価と比較し,ともに有意に低値を示した.また, 2回目は1回目の評価と比較し,有意に低値を示した.平均下群では1回目で29.00 kIU/L,2回目で15.00 kIU/L,3回目で12.00 kIU/Lであり,3回目は1回目と比較し,有意に低値を示した.また,2回目は1回目と比較し,有意に低値を示した.学習動機づけの様式は,平均上群,平均下群ともに,内発的動機づけの「内的調整」の項目や外発的動機づけの全項目の点数が低い傾向がみられた.
【考察】平均上群,平均下群ともに,唾液アミラーゼの中央値は全時点において基準範囲内(0~30 kIU/L)でストレスをあまり感じていない状態であり,我々の予測に反し,模試が近づくにつれて,さらにストレスは軽減した.平均上群,平均下群ともに,模試が近づくにつれてストレスが軽減した要因には,全学生が国試対策学習に取り組んだ結果,模試に対する焦りや不安が軽減したことが考えられる.本学では,週に1度,確認テストとグループ学習を実施することで,知識の定着化や集団意識の形成による不安の軽減を図っており,このような取り組みが模試へのストレス軽減に繋がった可能性がある.また,学習動機づけの様式では内発的動機づけの「内的調整」,外発的動機づけの点数が低かった.内発的動機づけの「内的調整」とは,興味や楽しさに基づく最も自律性の高い動機づけとされている.内発的動機づけの「内的調整」の強化するためには,教員は学生を指導する際に,問題を理解できることが面白い,点数が上がることで,自ら勉強をしたい,という動機づけに繋げる必要があると考えられる.また,外発的動機づけとは,行為そのものではなく,外部からもたらされるものを目標として,その目標を実現するために行為を行おうとすることである.外発的動機づけを強化するためには,学習の進捗状況が思わしくない学生に対しては,成績が向上しないと教員から徹底した指導を受けることになるというネガティブな面での動機付けを高めることや,成績が上がると他人に褒められるというポジティブな面での動機付けを高めることが必要であると考えられる.