第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

教育

[PR-6] ポスター:教育 6

2023年11月10日(金) 17:00 〜 18:00 ポスター会場 (展示棟)

[PR-6-5] 作業療法学科入学時の身体的・精神的自覚症の傾向

石井 幸美, 木村 陽子, 泉 真季子, 加福 隆樹 (東北メディカル学院)

【はじめに】近年,作業療法士養成施設において指定規則改正により教育カリキュラムや実習様式が変化し,学生に合わせた支援や指導が重要視されている.そのためには学生の心身の健康状態を把握する必要があり,その手段の一つとして本学院ではCornel Medical Index(以下,CMI)を入学時に実施してきた.本研究の目的は,本学院入学生の身体的精神的自覚症の傾向を把握し今後の学生支援の方法を探ることである.
【方法】対象は,2016年度から2022年度に本学院作業療法学科に入学した学生のうち,本研究の趣旨に同意した103名(男性49名,女性54名,年齢18.2±0.98歳)である.内訳は,2016年度18名,2017年度9名,2018年度9名,2019年度16名,2020年度24名,2021年度13名,2022年度14名であった.課題は入学時にCMIを行った.CMIは身体的自覚症12項目(目と耳,呼吸器系,心臓脈管系,消化器系,筋肉骨格系,皮膚,神経系,泌尿生殖器系,疲労度,疾患頻度,既往症,習慣)と精神的自覚症6項目(不適応,抑うつ,不安,過敏,怒り,緊張)について自己回答し,2つの自覚症得点を判別表に照らし合わせるとⅠ〜Ⅳの領域に区分される.領域Ⅰ・Ⅱは心理的正常,領域Ⅲ・Ⅳは神経症傾向とされる.分析は,神経症判別領域(Ⅰ~Ⅳ),身体的自覚症の各項目で「はい」を選択した数(以下,身体自覚症得点),精神的自覚症の各項目で「はい」を選択した数(以下,精神自覚症得点)について中央値を求めて年度間で比較した.
【結果】神経症判別領域は,2019年度以前は全員が領域Ⅰ・Ⅱであった.2020年度以降,領域Ⅰ・Ⅱの者の他に領域Ⅲ・Ⅳの者が2020年度6名,2021年度2名,2022年度1名いた.身体自覚症得点では,「呼吸器系」が2020年度以前は1.0~2.0点で推移したが,2021年度が3.0点,2022年度が2.5点で上昇傾向を示した.「消化器系」は,2019年度以前は1.0~1.5点で推移したが,2020年度と2021年度が2.0点,2022年度が1.5点で上昇傾向を示した.その他の身体的項目に目立った変化は見られなかった.精神自覚症得点では,「不適応」が,2020年度以前は2.0~2.5点で推移したが,2021年度と2022年度が3.0点で上昇傾向を示した.その他の精神的項目に目立った変化は見られなかった.
【考察】CMIの神経症領域や各項目について年度間で比較した.2020年度以降,神経症傾向を示す者が出現し,身体的自覚症状では呼吸器と消化器の症状を自覚する者が増加した.2021年からは精神的自覚症状で不適応症状を自覚する者が増加した.この要因として考えられるのは2020年1月以降の新型コロナウィルスの感染拡大である.感染対策である長期マスク着用が呼吸器の不調につながったものと示唆する.また,自粛生活を強いられるなど生活が一変したことで,心理的ストレスが大きく加わった.そのストレスは消化器の不調をもたらし,さらには不適応症状の増加につながった.この結果は,2020年以降に入学した学生だけでなく,今後入学してくる学生においても十分な支援が必要であることを示している.入学後の専門的な学習や臨床実習はさらなるストレスが生じる可能性が高いため,呼吸器や消化器の不調,不適応症状には注意が必要である.