第57回日本作業療法学会

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教育

[PR-6] ポスター:教育 6

2023年11月10日(金) 17:00 〜 18:00 ポスター会場 (展示棟)

[PR-6-6] 実習においてCROT-Rを用いた学び

冨高 史裕 (あいち福祉医療専門学校)

【はじめに】
 1年次臨床実習に向け対象者の背景を促える学習支援としてCROT-R(Clinical Reasoning OT Tool-Resume)を使用した学内演習を行った.CROT-Rは作業療法リーズニングの物語的リーズニング,科学的リーズニング,実際的リーズニング,倫理的リーズニング,相互交流的リーズニングの5つが含まれている1).本校の1年次臨床実習は見学中心だが学生の視点は科学的リーズニングに傾倒しやすい.そこで,学内演習で模擬事例を用いてCROT-R内に取り上げられている,科学的リーズニングと物語的リーズニングに焦点を当てまとめたので報告する.
【方法】
 事前準備は,PowerPointに模擬事例の情報をまとめ,見学場面を想定しコミュニケーション,移乗・移動,関節可動域測定の動画撮影.当日は5日間の期間を設定し初日にリーズニングについて講義してからCROT-Rのまとめ方の説明と見本を提示した.4事例(脳出血・橈骨遠位端骨折・うつ病・統合失調症)を用意して,毎日1事例ごとにPowerPointの中から基本情報の収集,事例のコミュニケーションと移乗・移動動作や評価・測定場面を動画で視聴した.CROT-Rのまとめかたに沿って,物語的リーズニング,科学的リーズニングを記載した.
【CROT-Rのまとめかた】
 1.表題の記載.2.基本情報(氏名・性別・年代・現病歴)を記載させた.3.物語的リーズニング(人生の物語・本人Needs・家族Needs).4.科学的リーズニング(リハビリ基本戦略(文献)・疾患の予後予測(文献)・物語に関する(文献)・他部門情報・評価結果(動作分析等))の4項目でまとめた.
【感想】
 学内演習の参加者の感想は,「リハビリを行うには,患者さんの今までの人生を聞き,本人のニーズや家族のニーズを聞き取ることが大切である」,「その聞き取った情報をもとにどうリハビリに繋げるかが重要であることを学んだ」,「うつ病や統合失調症などの患者さんに心理面でのケアも必要であると学んだ」という感想が挙がった.
【考察】
 丸山らは2)実際の根拠を目の前の対象者に適用する際,対象者の健康状態や生活機能のみならず,対象者の価値観や文化などの背景因子を踏まえた判断が必要であると述べている.学内演習では模擬事例動画を物語的リーズニング,科学的リーズニングに分けまとめかたを提示したことで健康状態だけでなく背景因子も焦点を当て検討できたと考える.CROT-Rは従来のレジュメ様式と比較すると自由度は低いが,学生が事例をまとめるきっかけとして道筋が把握でき他学生にも伝えやすい.教員が学生を指導する上でも作業療法の専門性を伝えやすいこと,自然と作業療法の臨床推論に近づくことができるため,生活行為向上マネジメント・従来のレジュメ様式を使用した学習にも繋げていきやすいのではないかと考える.今回,物語的リーズニング・科学的リーズニングに焦点を当てたが,長期実習に向け5つのリーズニングを使った演習の取り組み,従来のレジュメや生活行為向上マネジメントに繋げる学習も必要である.
【文献】
1)藤本一博:CROT-R,湘南OT交流会,2022.
2)丸山祥,長谷龍太郎:作業療法リーズニング概念の活用に関する文献研究-欧米と日本
における2005年以前と2006年以降の比較-,日本臨床作業療法研究No3,44-46,2016.