第57回日本作業療法学会

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教育

[PR-7] ポスター:教育 7

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 ポスター会場 (展示棟)

[PR-7-6] 既卒生に対する学習支援方法による得点推移の特徴

吉川 惠1, 猪熊 美保1, 藤倉 和宏1, 田村 孝司2 (1.株式会社 AIUTOmedico 国試リハビリセンター, 2.株式会社 アルテディア)

【はじめに】
第56回作業療法士国家試験の合格率は81.3%だったが,現役生の合格率が88.8%に対し,既卒者は25.2%と合格が難しい.養成校の教員は負担が多く,既卒者へのサポート不十分となる傾向があり,既卒者を支援する予備校等は増加している.筆者らは既卒者に対し通信もしくは通学で支援し,国家試験の結果でセラピストになることを諦める学生を減らすこと.通信での教育の充実を図ることを目的に「国試リハビリセンター」を開設し,通信,通学で補習,個別面談支援している.本研究は,通信と通学で受験者の得点の推移について分析することで適切な支援方法について知見を得ることを目的とする.
【行った支援】
通学型:週に1回対面で授業,他学生とアクティブラーニングで学生同士の交流,個別面談.
通信型:いつでも閲覧可能なオンデマンドの授業,最低週1回のオンライン面談.
共通支援:担当講師を設定,質問はいつでも制限なく可能.教育支援システムによる学習記録.月に1回実力テストで,実力の確認, 手元をカメラで写し他学生との一体感のある週1回1時間のオンライン勉強会.
【方法】
2022年に当校に入学した32人を対象とし,学習時間データ及び模擬試験得点について完全な情報がある23人(平均25.1±4.9歳,通学:7人,通信:16人)を分析対象とした.模擬試験得点,入学時と10月の差について,学習時間,面談回数,年齢,性別,学歴,修業年限入学から分析した.
【倫理的配慮】
面談の内容,学習時間の記録,模試の結果について,個人を特定できない状態で使用することを説明し同意を得た.
【結果】
入学時の学内模試の平均点は通信利用者(以下,通信)が155.3±27.9,通学利用者(以下,通学)が106.9±13.5と通学者の方が優位に低かった(p<0.05).入学時と10月の増加得点は通信が15.3±26.0,通学が61.1±18.5と優位に高かった(p<0.05).学習時間の合計は18,553時間,面接回数は28.6回で通学,通信に有意差は見られなかった.また,学歴は通信の大学卒が16人中10人,通学が10人中3人で優位差はなかった.増加得点は,通学通信の別,入学時の得点を調整した重回帰分析で,学習時間が長いほうが,得点が向上していた(p<0.05)
【考察】
入学時の平均点は通信型の方が高かったが,入学時点と比較した時に得点の増加量は通学型の方が高くなっていた.また,入学時の得点と通学通信の別で調整した場合に学習時間が長いほうが,増加得点が高くなる傾向があった.国家試験が不合格だった既卒者は挫折を味わい,1人でモチベーション維持することが難しい.また生活の維持のためアルバイトをする学生も多く勉強時間が確保しにくい.週1回の面談やいつでも講師に連絡できること,他の学生とオンライン上での交流が孤独感を減らし学習時間を増加させ,試験結果が向上したと考えられる.通信型は入学時平均点が高く,通学者は増加得点が多かったことは,卒業時の学習到達状況が低い場合には通学型を利用し,学習体制の確立を行うことで効果的に得点を向上させ,ある程度到達できている場合には通信により学習に対する負担を軽減しつつ学習を進めるのが良いのではないかと考えらえた.
【終わりに】
国家試験が不合格だった既卒生はコロナ禍で学生同士の交流不足や経験不足,社会的隔絶感がある.しかし国家試験不合格で味わった挫折を乗り越えた学生は対象者への支援を手厚く行ことができるだろう.今後,学生達が味わった苦悶を無駄にせず支援していきたい.