第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

教育

[PR-8] ポスター:教育 8

2023年11月11日(土) 11:10 〜 12:10 ポスター会場 (展示棟)

[PR-8-6] 当院における自動車運転支援に関する意識調査と教育的効果の検証

河原 龍平, 松岡 耕史, 岸 真生, 大貫 優斗, 三浦 由貴 (医療法人社団幸隆会 多摩丘陵病院リハビリテーション技術部 作業療法科)

【はじめに】
道路交通法の改定により,一定の病気を持つ者が免許更新時に診断書を求められることが増加していることや,認知症及び軽度認知機能障害者の問題が注目されていることなどから,運転に関わる作業療法士の需要は高まっている(藤田 2017).OT協会でも運転と作業療法委員会が設立され,運転支援に関わる人材育成等の活動を行っている.運転支援を行っている各施設においても,独自の方法で運転支援に関する教育を行っていると推察されるが,具体的な教育方法や効果についての報告は少ない.今回当院作業療法士(OTR)に運転支援に関する勉強会を実施し,運転支援への意識調査と教育的効果を検証し,今後の教育方法についての課題を明らかにすることを目的とした.
【方法】
対象者はOTR36名,勉強会前後にアンケートを実施した.設問は①現状の理解度(1.他者へ指導ができる,2.紙面を見れば実施できる,3.実施に助言が必要,4.わからない,の4段階),②運転支援に対する印象(自由記載),③支援における不安や疑問の3項目とし,①,③はそれぞれⅠ)法制度,Ⅱ)運転支援の流れ,Ⅲ)基本情報の収集,Ⅳ)身体機能評価,Ⅴ)認知機能評価,Ⅵ)日常生活評価の6項目を聴取した.アンケート結果を基に科内勉強会(20分×2回)を実施した.内容は運転関連の法律,運転支援の流れ,当院で使用している評価表の説明,認知機能と運転技能の関連について講義を実施した.勉強会後のアンケートでは,上記内容に加え今後勉強会で行ってほしいことを追加聴取した.アンケートは無記名式とし,設問内で研究協力の可否を記載し,各OTRから書面にて承諾を得た.
【結果】
アンケート回答は勉強会前34名(経験年数1~3:12名,4~6:5名,7~9:8名,10~:9名.支援経験有:16名,無:18名),勉強会後29名(経験年数1~3:11名,4~6:4名,7~9:7名,10~:7名.支援経験有:15名,無:14名)であった.
①4段階のうち1,2を自立,3,4を要助言とした.勉強会前後での助言が必要である割合について示す.Ⅰ)法制度:64.7%⇒34.4%,Ⅱ)支援の流れ:64.8%⇒24.1%,Ⅲ)基本情報収集:47.1%⇒17.2%,Ⅳ)身体機能評価:50%⇒20.7%,Ⅴ)認知機能評価:52.9%⇒20.7%,Ⅵ)生活状況評価:50%⇒20.7%と全ての項目において割合は減少した.勉強会後のアンケート結果において,運転支援の未経験者の4割程度は実施に助言が必要との回答であった.
②勉強会前は「多くの知識が必要で難しそう」,「第三者へ影響を及ぼすかもしれず,責任が重い」,「高次脳の評価結果と運転評価がどのように結びつくかわからない」との内容であった.勉強会後は「支援の流れについて整理できた」,「評価の視点が広がった」,一方で「知識は増えたが,難しい印象は変わらない」,「実際にやったことがないからイメージが持ちにくい」との内容であった.
③勉強会前は法制度76%,支援の流れ55%,認知機能評価44%の順に不安や疑問を感じていた.勉強会後は法制度37%,支援の流れ37%,認知機能評価27%と全ての項目で減少した.
④実際に運転支援を行った症例紹介や,症例を通したアプローチ方法が知りたいとの回答が多かった.
【考察】
アンケート結果より,法制度,運転支援の流れ,認知機能評価にて多くのOTRが不安を抱えていることが分かった.また勉強会の実施後は,助言を必要と感じる割合は減少したが,未経験のOTRは実施に助言が必要と感じる傾向にあった.今回は基礎知識に関しての講義のみであり,具体的な支援イメージの欠如が要因と考えられる.運転支援の教育は,On the Job Training中心の指導やクリニカルクラークシップの要素を取り入れた教育体制を構築し,実際の症例を通した関わり方等,臨床経験を積みながらの人材教育が有効であると考える.