第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-8] ポスター:教育 8

2023年11月11日(土) 11:10 〜 12:10 ポスター会場 (展示棟)

[PR-8-7] 作業療法学生のオタク趣味特性と養成課程進学の関係

出口 弦舞, 長 志保 (国際医療福祉大学小田原保健医療学部 作業療法学科)

【背景】アニメオタクは約685万人,漫画オタクは約648万人とされ(矢野経済研究所2022),「オタクについて正確に中立的に論じる事は社会学・臨床心理学の観点から極めて重要」とされる(山上2021).オタクは特定分野に熱中し(折原2009),創作活動する場合がある(KDDI総合研究所2018)ことから,手工芸等熱中できる作業を治療に活用する作業療法に共感しやすく,作業療法士を職業選択する可能性があると考えた.そこで作業療法学生(以下OT)に対しオタク趣味特性を持つ割合や養成課程進学との関係を調査し,実態を明らかにした.比較として看護学生(以下Ns),理学療法学生(以下PT)にも調査を行った.これにより作業療法養成課程に興味を持つ可能性のある者の特性把握,作業療法教育の留意点に寄与できると考えた.【方法】菊池(2000),折原(2009),横田(2018)等の文献より,未だ学問体系を成さないサブカルチャーに強い興味を示し,それらに支出し,内向的で創作活動を伴う場合がある者(伴わなくても良い)をオタクと客観的に定義した.調査対象は4年制の医療職養成大学のOT1,2年生82名,Ns1年生83名,PT1年生80名とし,質問紙法による横断的調査研究を行った(倫理審査承認番号 22-Ig-109).質問項目は1.学科・性別など2.オタクの自認3.オタクと進学の関係4.15のサブカルチャーへの強い興味(種類調査含む)とそこへの支出5.内向性,6.創作活動の有無とし選択式回答とした.χ2検定で分析した(FreeJSTAT22.0E使用).【結果】回答率はOT93.9%,Ns49.4%,PT96.3%.自認オタク率はOTが52.6%であり,Nsは61.0%でPTが32.5%と最も少なかった(χ2=8.80,df=2,P<0.05).サブカルチャーへの強い興味と月に1万円以上の支出,内向性と創作活動を伴う者とするオタク定義にあたる者はOTで8.1%と少数であり,Nsは0.0%,PTも4.8%と少数であった.しかし創作活動を除きサブカルチャーへの強い興味と月に1万円以上の支出がある内向的な者のみの割合で見るとOTは22.6%であり,Ns11.8%,PT32.3%とPTが最も多かった(χ2=9.47,df=2,P<0.01).このうち内向性のみに着目するとOTは51.9%,Ns39.0%,PT45.5%であった(学科間の有意差無し).また強い興味のあるサブカルチャーの種類数の平均はOT3.2,Ns1.8 ,PT2.5であった(学科間の有意差無し).オタク趣味特性と作業療法養成課程進学の関係もOTで4.8%と関係性は低かった.Nsも12.0%,PTも4.0%であった(学科間の有意差無し).【考察】自認でも客観的定義でもOTにオタク趣味特性の学生が多いという仮説だったが,その割合は6割も超えず,学科間でも有意な差は認められないか,認められても他学科に多い結果となり棄却された.創作を伴うオタク定義にあたる学生はNs・PTよりOTで若干多い印象だが非常に少数であった.さらにオタク趣味特性と作業療法養成課程進学の関係は乏しかった.ここからオタク趣味特性のある者は作業療法に興味が持てる可能性があるも,作業療法養成課程進学を選択する割合は低い現状が明らかになった.この理由の一つには養成課程入学前の作業療法に対する理解が,作業療法は手工芸等を治療に用いる程度にとどまり,熱中できる作業が治療に活用できるという治療概念までは理解できていないことが考えられた.創作活動を伴わないオタク趣味特性の者も含め作業療法へ興味を持たせるためには,熱中できる作業が治療に活用できるという治療概念を明確に伝える必要が示唆された.またOTには5割の内向的な学生がいることが明らかになり,同時にこの特性を踏まえた教育の必要性も示唆された.