第57回日本作業療法学会

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企画セミナー

[S-14] 企画セミナー14:Review Circle on Rehabilitation for Dementia (RCRD)

Sun. Nov 12, 2023 10:50 AM - 11:50 AM 第2会場 (会議場A1)

司会:横山 和樹(札幌医科大学保健医療学部作業療法学科)

[S-14-1] 本人と家族のより良い生活を紡ぐ認知症作業療法

久米 裕1, 西田 征治2 (1.秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻作業療法学講座, 2.県立広島大学大学院総合学術研究科作業遂行障害領域)

認知症を有する人はますます増えており、我々作業療法士は、認知症の人とその家族に対して根拠に基づいた臨床実践が一層求められている。我々Review Circle on Rehabilitation for Dementia(RCRD)に所属する臨床家・研究者らは、認知症に対する作業療法について様々な臨床経験・研究結果に基づいたアプローチ方法を模索してきた。これまでは重症度別の評価・アプローチ方法、IoTを用いた新しい介入方法などを提案してきた。今回のセミナーでは、本学会のテーマに沿うように、認知症の作業療法の「仕組み」について考えたい。認知症の作業療法は、主に本人の視点と家族の視点の両側面の仕組みに注目する。本人には主に生活障害、 家族には介護負担などの評価を行い、どのような関係性でその課題が発生しているのか、その仕組みについて考察し介入する必要がある。
 第一演者の久米裕氏は、認知症の生活リズム障害に対するウェアラブル技術を用いた国内外の研究知見をもとに臨床への応用例を紹介する。生活リズムを再構築することは、 認知症に対する作業療法の治療目標の1つに掲げられており、毎日の生活にリズムをもたせ、その生活リズムを踏まえて活動し休息することが、認知症対象者の日常生活障害や行動心理症状を軽減させるのみならず、心身の健康を良好に保つために重要である。第二演者の西田征治氏は、家族支援について、家族と本人との関係性の中でどのような支援が必要なのか、その具体的な評価方法から支援の実際までを国内外の知見と自身の実践例をもとに紹介する。その中で家族の状態や状況に応じた心理的サポートに留まらず、行動心理症状がどのような「仕組み」で生起しているのかを理解し、「作業」を活用しながら彼らの望む生活を紡ぐための家族指導や援助のあり方について考えたい。
 これまでのRCRDのセミナーでは、 近年の国の施策と作業療法士協会の重点課題について企画してきた。今回は「ものごとの仕組みに注目する」という本学会のテーマを鑑みて、作業療法が認知症を有する人とその家族が抱える課題の解決の糸口になる内容を発表したい。その意味で、本セミナーは認知症だけにとどまらず様々な疾患を対象としている全ての作業療法士にとって重要なテーマである。