第57回日本作業療法学会

講演情報

企画セミナー

[S-17] 企画セミナー17:認知症臨床研究会in 佐賀

2023年11月12日(日) 10:50 〜 11:50 第5会場 (会議場B2)

司会:菅沼 一平(京都橘大学 健康科学部 作業療法学科)

[S-17-1] 地域における世代間交流と作業療法士ができること -地域を元気にする“仕掛け”-

北山 淳1, 原田 瞬2, 上城 憲司3 (1.医療創生大学 健康医療科学部 作業療法学科, 2.京都橘大学 健康科学部 作業療法学科, 3.宝塚医療大学)

「世代間交流」の定義は「異世代の人々が相互に協力し合って働き,助け合うこと,高齢者が習得した知恵や英知,ものの考え方や解釈を若い世代に言い伝えること」である(Newman1997).わが国では,少子高齢化や核家族化の進行に伴い,コミュニティの弱体化や地域住民の社会的孤立が問題視されるようになって久しい.そうした社会に対応する形で,各自治体では90年代より世代間交流の事業が行われるようになり,そのプロセスで事業の目的は「地域共生社会の実現」といった意味合いがより強くなっていった.
 世代間交流の実践報告は高齢者と子ども,大学生を中心に数多く報告されている(David2019).高齢者においては老年期での世代性の発達が効果として期待され,子どもや大学生では,エイジズムや認知症に対するスティグマ軽減,同世代同士の交流では得られない社会性が育まれるといった効果が期待される.そして,これらの効果から,世代間の相互理解が深まり,人と人とのつながりが強化されると考える.ただし,世代間交流は自然発生的なものだけでは不十分であり,熟慮された「仕掛け」が必要である(村山2018).我々作業療法士は「作業」によって人とのつながりを支援することが強みの職業である.「作業」を用いて世代間交流を促進する仕掛けをつくることで,前述の効果からソーシャルキャピタルの醸成,ひいては地域全体がエンパワーしていく可能性があり,それは「地域共生社会の実現」への意義のある一歩と考える.
 本セミナーでは,発達・老年期障害領域の熟練作業療法士が「世代間交流」を軸にした地域の実践報告をする.具体的には①地域の特色と小学校への関わり,②認知症予防事業の取り組み,③官民学連携による団地活性化の取り組みである.実践報告の中で,作業療法士が考える地域課題や課題克服に向けた仕掛けを述べる.また,本セミナー通して,「地域で活動がしたいけど何をしていいかわからない」「自分にできるか自信がない」・・・そんな作業療法士の疑問や不安にも答えていきたい.