第57回日本作業療法学会

講演情報

企画セミナー

[S-6] 企画セミナー6:老年療法学会

2023年11月10日(金) 17:00 〜 18:00 第6会場 (会議場A2)

司会:田中 寛之(大阪公立大学医学部リハビリテーション学科)

[S-6-1] 認知症の予防から診断後のリハビリテーション 老年療法領域における作業療法士が果たす役割

横井 賀津志1, 浅野 雅子2 (1.大阪公立大学医学部リハビリテーション学科, 2.北海道医療大学 リハビリテーション科学部 作業療法学科)

老年療法学会は2021年に創設された新しい学術団体である。本団体は作業・理学療法士, 言語聴覚士などの多職種で構成されており, それぞれの専門性から創出された知見を共有することで, リハビリテーションを通してよりよい高齢者保健, 医療, 福祉の実現に近づくことを目指した学術団体である。とくに, 老年療法領域において作業療法士に求められる役割は, 「認知症の予防や診断後のリハビリテーション」である。今回のセミナーでは, 老年療法領域とくに認知症の予防や進行の抑制について, 作業療法士が求められている役割やこれまで培かってきた技術・研究的知見について発表し, これらの知見の地域展開, 多職種との協働, 行政・省庁の施策に反映するためにどのようにすればよいか, 将来の展望についてまでも議論したいと考えている。
 本セミナーは二人の講師で発表する。第一演者の横井賀津志氏においては, 演者自身が医師や理学療法士らの多職種とともに「作業」に焦点を当てた地域在住の高齢者を対象としたコホート研究を実践してきた。その中で, 作業療法士の視点が組み込まれた認知症・転倒の予防に関するアプローチ方法について, 従来の知見とともに発表する。第二演者の浅野雅子氏においては, 作業療法の臨床で頻繁に用いられる「音楽」について焦点をあてた研究を音楽療法士と共に実践してきた。作業療法士における音楽の有用性は言うまでもないことであるが, 具体的にどのように音楽を用いて認知症予防に資するか, 診断後のリハビリテーションについて活用するか, その根拠と臨床実践の応用については, 十分に明らかではなかった。本発表では, 浅野氏らの研究の知見も含めて, 作業療法士にとって役立ち, 臨床応用できる知見を発表する。
 高齢者をとりまく諸課題を解決するための方法は作業療法士だけでなく, 多職種で解決することが必要である。老年療法学会は, 作業療法士だけでない多職種で構成される学会であり, この学会で得られた知見を作業療法学会で発表することは重要な意義があると思われる。本学会のテーマである「ものごとの仕組みに着目する」という点においても, どのような仕組み, 役割によって多職種による協業実践が成功したのかを演者らの例によって示すことができると考えている。