第57回日本作業療法学会

講演情報

専門作業療法士セミナー

[SOT-5] 専門作業療法士セミナー5

2023年11月10日(金) 11:00 〜 12:00 第7会場 (会議場B3-4)

司会:岡野 昭夫 (中部大学 生命健康科学部 作業療法学科)

[SOT-5-1] Useful handを目指す臨床の現状と課題

野中 信宏1 (1.愛野記念病院 手外科センター)

現在,ハンドセラピィ領域においては脳と手,手のパフォーマンス,運動学習,ADL場面での手の使用困難感,心理・思考的側面,QOLなどがキーワードとして,研究が変遷している.ハンドセラピィの真の治療効果が生活で使える手,使いやすい手,思い通りに動く手,支障ない手などと表現されるuseful handを獲得したかどうかにあると考えると当然の潮流といえる.
一方,臨床では長らく拘縮をいかにして予防するかという問題に直面してきた.現在も柔らかい関節,十分な腱の滑走・筋収縮など円滑な可動域を持ったしなやかな手の獲得が当面の目標に変わりはない.これらは損傷組織を修復する外科的治療の発展に加えて,専門的知識や技術をもったハンドセラピストによる早期ハンドセラピィによって多くは解決できるようになってきた.しかしながら,神経系を由来とする痛みやしびれ,知覚障害,運動麻痺,それらの再建後の再教育等に対する効果的な治療法は,useful handを目指す上でいまだ実臨床の大きな課題となっている.本セミナーの前半では,本邦におけるハンドセラピィ研究の動向や臨床の現況を振り返り,後半は演者が取り組んでいるuseful handを目指した運動機能再建術後の急性期からの機能転換訓練を紹介する.