[OC-1-4] 短期間の作業療法により在宅酸素療法のアドヒアランスが改善した慢性呼吸不全の1例
【はじめに】呼吸器疾患患者の30〜50%は在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy: 以下HOT)を処方通りに使用しておらず, HOTに関するアドヒアランス支援や行動変容に向けた介入が求められている. 慢性呼吸不全例に対する30日間の介入により, HOT導入の理解が得られたとの報告はあるが, 短期間介入の効果に関する報告は少ない. 今回, 約1週間の介入によりHOTの必要性の理解が得られた慢性呼吸不全例を報告する. なお, 本報告に際し症例の同意を得ている.
【症例紹介】A氏, COPD, 特発性肺線維症による慢性呼吸不全と肺性心のある70代後半男性で, X-1年にHOT導入も自己中断していた. X年Z日に労作時呼吸困難(Dyspnea on effort: 以下DOE)が増強し, 肺性心の増悪を認めHOT調整目的に入院した. 足腰が不自由な妻と同居し, 入院前ADLは自立, 掃除が家庭内の役割であった.
【作業療法評価(Z +1〜4日)】MMT: 四肢5, MMSE: 28/30点, MoCA-J: 21/30点, 20m歩行: 室内気で最低SpO2(以下minSpO2)90%, modified Borg Scale(以下mBS)呼吸4, 酸素1L/min(鼻カヌラ)でminSpO2 94%, mBS呼吸3, Barthel Index Dyspnea(以下BID): 37/100点, COPD Assessment Test(以下CAT): 20/40点, Lung Information Needs Questionnaire(以下LINQ): 19/26点, HOTの効果や低酸素血症に関する知識に乏しかった. 「息はしんどいけど別に生活は困ってない」と, 室内気で棟内移動しSpO2 が80%台へ低下した場面が見受けられた. ADOC paper版では, ”掃除”の重要度が最も高く満足度は1/5点で, DOEによる活動制限を気にかけていた. また, 「妻に迷惑はかけたくない, 今の生活は維持したい」との思いを聴取した.
【介入方針】HOTの必要性の理解が乏しい要因に, DOEによる生活制限を感じていないこと, HOTや低酸素血症への知識不足が挙げられた. 妻に迷惑はかけたくないと考えるA氏にとって, 家庭内の役割に応じるための”掃除”は関心が高く遂行に価値がある作業と推測されたため“掃除”を通してHOTに関する必要性の理解と使用を促すことを目指した.
【方法・経過(Z +5〜8日)】掃除の実動作を通して以下の2点の介入を行った. ①HOTの有効性を示す関わり: 酸素投与あり/なしでの同一動作におけるSpO2・mBSそれぞれの変化(酸素2L/min: minSpO2 96%, mBS呼吸3/ 室内気: minSpO2 91%, mBS呼吸4)と, 酸素使用による動作時の休憩頻度の減少を共有した. 動作の中で, 「酸素使うと息楽なる」, 「掃除範囲増やせそう」と, 自宅の掃除範囲拡大への意欲がみられた. ②HOT使用のイメージを促す関わり: 掃除範囲の拡大に向け, 自宅環境を想定しながら酸素カヌラの管理や休憩, 呼吸法についてA氏と確認し納得のいく方法が得られるよう関わった. 「イメージできた」, 「排便と風呂と階段も酸素使う」と, 他活動時のHOT使用を意識するようになり, 使用場面と自宅の動線について確認した.
【結果】退院時(Z +9日), ADOC paper版では掃除の満足度5/5点となった. 外来時(Z+41日), BID: 28/100点で入浴・歩行項目の改善を認めた. CAT: 18/40点, LINQ: 6/26点, HOTに関する知識や必要性の理解が得られた. 自宅ではHOTを使用し活動するようになり, 「酸素あるから生活できています」とHOTの効果を実感する様子がみられた.
【考察】関心のある作業を取り入れた介入が, 意欲や自己能力への認識を高めたと報告されている. 本症例では, ADOCの使用により家庭内の役割に対する関心や妻への思いを早期に評価でき, その役割に着目した介入が可能となった. その結果, 症状やHOTの効果に対する気づきが促され, 短期間でのHOTのアドヒアランス改善に繋がった可能性がある.
【症例紹介】A氏, COPD, 特発性肺線維症による慢性呼吸不全と肺性心のある70代後半男性で, X-1年にHOT導入も自己中断していた. X年Z日に労作時呼吸困難(Dyspnea on effort: 以下DOE)が増強し, 肺性心の増悪を認めHOT調整目的に入院した. 足腰が不自由な妻と同居し, 入院前ADLは自立, 掃除が家庭内の役割であった.
【作業療法評価(Z +1〜4日)】MMT: 四肢5, MMSE: 28/30点, MoCA-J: 21/30点, 20m歩行: 室内気で最低SpO2(以下minSpO2)90%, modified Borg Scale(以下mBS)呼吸4, 酸素1L/min(鼻カヌラ)でminSpO2 94%, mBS呼吸3, Barthel Index Dyspnea(以下BID): 37/100点, COPD Assessment Test(以下CAT): 20/40点, Lung Information Needs Questionnaire(以下LINQ): 19/26点, HOTの効果や低酸素血症に関する知識に乏しかった. 「息はしんどいけど別に生活は困ってない」と, 室内気で棟内移動しSpO2 が80%台へ低下した場面が見受けられた. ADOC paper版では, ”掃除”の重要度が最も高く満足度は1/5点で, DOEによる活動制限を気にかけていた. また, 「妻に迷惑はかけたくない, 今の生活は維持したい」との思いを聴取した.
【介入方針】HOTの必要性の理解が乏しい要因に, DOEによる生活制限を感じていないこと, HOTや低酸素血症への知識不足が挙げられた. 妻に迷惑はかけたくないと考えるA氏にとって, 家庭内の役割に応じるための”掃除”は関心が高く遂行に価値がある作業と推測されたため“掃除”を通してHOTに関する必要性の理解と使用を促すことを目指した.
【方法・経過(Z +5〜8日)】掃除の実動作を通して以下の2点の介入を行った. ①HOTの有効性を示す関わり: 酸素投与あり/なしでの同一動作におけるSpO2・mBSそれぞれの変化(酸素2L/min: minSpO2 96%, mBS呼吸3/ 室内気: minSpO2 91%, mBS呼吸4)と, 酸素使用による動作時の休憩頻度の減少を共有した. 動作の中で, 「酸素使うと息楽なる」, 「掃除範囲増やせそう」と, 自宅の掃除範囲拡大への意欲がみられた. ②HOT使用のイメージを促す関わり: 掃除範囲の拡大に向け, 自宅環境を想定しながら酸素カヌラの管理や休憩, 呼吸法についてA氏と確認し納得のいく方法が得られるよう関わった. 「イメージできた」, 「排便と風呂と階段も酸素使う」と, 他活動時のHOT使用を意識するようになり, 使用場面と自宅の動線について確認した.
【結果】退院時(Z +9日), ADOC paper版では掃除の満足度5/5点となった. 外来時(Z+41日), BID: 28/100点で入浴・歩行項目の改善を認めた. CAT: 18/40点, LINQ: 6/26点, HOTに関する知識や必要性の理解が得られた. 自宅ではHOTを使用し活動するようになり, 「酸素あるから生活できています」とHOTの効果を実感する様子がみられた.
【考察】関心のある作業を取り入れた介入が, 意欲や自己能力への認識を高めたと報告されている. 本症例では, ADOCの使用により家庭内の役割に対する関心や妻への思いを早期に評価でき, その役割に着目した介入が可能となった. その結果, 症状やHOTの効果に対する気づきが促され, 短期間でのHOTのアドヒアランス改善に繋がった可能性がある.