第58回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-4] 一般演題:地域 4

2024年11月9日(土) 15:40 〜 16:40 E会場 (204)

座長:久保田 智洋(アール医療専門職大学 作業療法学科)

[ON-4-5] 飯山市地域在住高齢者の基本チェックリストによるフレイル状態の10年前との比較

古川 智巳1,2, 北澤 一樹1, 土屋 謙仕1, 岩谷 力1, 務台 均2 (1.長野保健医療大学 保健科学部, 2.信州大学 大学院 総合医理工学研究科)

【はじめに】
 2022年の日本では,高齢化率29.1%で今後さらに後期高齢者の増加が予想されている.Suzukiら1)は日本の6コホートのメタ分析において10年前と比較し,健康関連指標の減少が緩やかであった,と報告している.地域高齢者の状態やリスクが10年前から変化しているのであれば,介護予防も以前と異なる対応が必要になる可能性がある.飯山市全体の高齢者のフレイル状態について2022年と10年前との構成比の違いを年齢階級別に明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】
 対象は,介護保険認定を受けていない飯山市地域在住高齢者で2012年,2022年のいずれかの基本チェックリスト調査に参加者のうち,完全回答した者(2012年:4315名,平均年齢75.6歳SD6.9歳,2022年:4487名,平均年齢74.4歳SD6.9歳)とした.
 各調査年の年齢から5歳刻みの年齢階級(65-69,70-74,75-79,80-84,85-89,90-)の6グループに分類し,基本チェックリスト総得点から,フレイル状態(0-3点をロバスト,4-7点をプレフレイル,8点以上をフレイル)2)を判定した.
 年代ごとに2012年と2022年のフレイル状態の構成比の偏りを比較するため,2012年・2022年×フレイル状態のクロス集計を年齢階級別に行い,χ²検定および調整済み残差を求めた(有意水準は5%未満とし,調整済み残差は|1.96|より大きい場合を有意差ありと判断した).統計解析ソフトはSPSS(バージョン27)を用いた.本研究は当該施設の倫理審査委員会の承認を得ている.
【結果】
 すべての年齢階級において2012年と2022年のフレイル状態の構成比に有意な差が認められた(χ²検定:<0.05).残差分析による2022年のフレイル状態の構成比は,2012年に比べ,全年齢階級でロバストが高かった.同じく2022年は2012年と比べ,65-69以外の年齢階級でフレイルが低かった.同様に65-69,75-79でプレフレイルが低く,85-89はプレフレイルが高かった.
【考察】
 2012年の飯山市の人口は2.2万人であり2022年の10年間で1.8万人まで減少,高齢化率は31.4%から39.2%に増加している.この間,団塊の世代が高齢者となったことで75歳までの増加は認められるも,75歳以上の年齢階級においてもフレイル状態ではない高齢者の割合が10年前より高かった.Suzukiら1)は,2007年と2017年を日本の6コホートの健康関連指標を比較し,男性では75歳以降,女性では70歳以降の歩行速度や握力の低下が緩やかであったことを報告している.これら歩行速度や握力を含むCHS基準から基本チェックリスト総得点によるフレイル状態の判定が作成された2)ことから,先行研究においてフレイルの人数が減少したことが予測され,飯山市でも同様の傾向があったと考えられた.10年前より85-89歳のフレイルが少なくプレフレイルが多かった結果から,後期高齢者において健康寿命延伸が図れている可能性がある.今後,地域在住高齢者に対する作業療法士は,特に後期高齢者のリスク評価や介護予防の介入方法を適宜更新しながら関わる必要がある.
【文献】
1)Suzuki T, et al. Are Japanese Older Adults Rejuvenating? Changes in Health-Related Measures Among Older Community Dwellers in the Last Decade. Rejuvenation Res. 2021 Feb;24(1):37-48.
2)Satake S, et al. Validity of the Kihon Checklist for assessing frailty status. Geriatr Gerontol Int. 2016 Jun;16(6):709-15.