第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-3] ポスター:脳血管疾患等 3

2024年11月9日(土) 12:30 〜 13:30 ポスター会場 (大ホール)

[PA-3-4] 回復期脳卒中患者の上肢痙縮に対する体外衝撃波の治療効果

二瓶 太志1, 酒向 正春2 (1.ねりま健育会病院 リハビリテーション部, 2.ねりま健育会病院 診療部)

【はじめに】脳卒中後の痙縮治療において,近年,体外衝撃波によるアプローチが有効である可能性が示唆されている.今回,医師の指示のもと,回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中片麻痺患者8名に対して上肢の痙縮改善を目的に体外衝撃波による治療を実施し,施術前後の変化を調査したため報告する.本報告は当院の倫理委員会の承認を得ている.
【対象】回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中患者8名.年齢は47歳から83歳(平均年齢は64.6±16.7歳)で,男性5名,女性3名.発症日から施術日までは平均129.8±41.4日で,照射時の運動FIMは平均49.5±30.8,認知FIMは平均20.4±10.9であった.
【方法】使用機器は拡散型衝撃波療法機器のインテレクトRPWモバイル(インターリハ株式会社).施術にあたっては強度2.0bar,頻度12 Hz,照射数2000発で週1回の頻度で実施し,2か所までとした.評価は照射の前日,直後,翌日,3日後,1週間後に実施し,施術した筋群のmodified Ashworth scale(以下MAS),p-ROMの変化を調査した.MASに関しては,Kajiらの方法に従い,grade 1+は1.5に換算して検定した.
【結果】施術部位は手指屈筋群7名,手指伸筋群1名,手関節屈筋群1名,上肢屈筋群4名の延べ13名であった.
 MASの経過は,直後の評価では,前日と比べ改善9名,変化なし4名,悪化0名.翌日の評価では,前日と比べ改善3名,変化なし10名,悪化0名.3日後の評価では前日と比べ改善4名,変化なし9名,悪化0名.1週間後の評価では前日と比べ改善3名,変化なし10名,悪化0名であった.また,MASは前日1.6±0.6,直後1.1±0.6,翌日1.4±0.6,3日後1.4±0.6,1週間後1.4±0.6であり,前日と直後との間で有意な向上,直後と翌日との間で有意な低下を認めたが,前日と翌日以降の間には有意な差を認めなかった.
 P-ROMの経過は,直後の評価では,前日と比べ改善10名,変化なし3名,悪化0名.翌日の評価では前日と比べ改善9名,変化なし3名,悪化1名.3日後の評価では前日と比べ改善8名,変化なし4名,悪化1名.1週間後の評価では前日と比べ改善8名,変化なし4名,悪化1名であった.また,p-ROMは前日38.9±50.6度に対して,直後50.4±54.1度,翌日47.3±49.9度,3日後45.0±50.7度,1週間後45.4±49.6度であり,前日と直後の間に加え,前日と翌日,前日と3日後,前日と1週間の間でいずれも有意な向上を認めていた.直後と翌日の間では低下傾向であったが,有意差は認めなかった.
【考察】脳卒中後の痙縮に対する体外衝撃波に関して,メタアナリシスにおいて異質性が高いものの,痙縮抑制効果が報告されており,施術から12週間以上でも効果が持続する可能性が示されている.本研究においては,痙縮改善効果は施術直後においては認められたが,翌日以降に関しては,病前と同程度に戻っている症例が多く,痙縮改善効果の持続については明らかではなかった.一方,関節可動域に関しては,施術直後に最も改善を認め,翌日はやや低下を認めたが,施術前日と比較すると,その改善効果は翌日以降も1週間後まで持続していた.これは,体外衝撃波により痙縮が改善し関節可動域が向上したことに加え,並行して実施していたリハビリテーション訓練による併用効果の可能性が考えられた.
【結語】脳卒中後の痙縮に対する体外衝撃波に関して,施術直後の痙縮抑制と関節可動域改善効果を認め,関節可動域改善効果は翌日後,1週間後まで継続していた.さらに症例数や期間の充実を図り,効果検証が必要である.