[PA-6-10] 生活期脳卒中患者に対する自主訓練型上肢機能訓練の短期効果および長期効果
【序論】Constraint-Induced Movement Therapy（CI療法）は，数多くのランダム化比較試験とメタアナリシスによってエビデンスが確立している（Corbetta D et al, 2015）．しかし，生活期脳卒中患者を対象とした通所リハビリテーションにおける課題指向型訓練の報告は未だに少ない．
【目的】われわれは，通所リハビリテーションにおいて実施可能なCI療法を基盤とする自主訓練型の上肢機能訓練プログラム（本プログラム）を考案した．本研究の目的は，本プログラムの短期効果および長期効果を検討することである．
【方法】本プログラムは，課題指向型訓練とTransfer Packageを1日3時間，週1回の頻度で6ヶ月間実施するプロトコルとした．適応基準は，Stroke Impairment Assessment Set運動項目のknee-mouth test 2以上かつfinger function test 1b以上の者，脳卒中発症後180日以上経過している者などとした．本研究の対象は，2019年7月から2022年6月末において，本プログラムを実施した10名とした．効果判定は，主要アウトカムとして，Fugl-Meyer Assessmentの上肢運動項目（FMA）， Box and Block Test（BBT），Action Research Arm Test（ARAT），Motor Activity Log（MAL）のAmount of Use（AOU）とQuality of Movement（QOM）を用いた．また，副次的アウトカムとして，対象者が掲げた10項目の目標に対する遂行度と満足度を測定した．統計解析は，介入前，介入後，6ヶ月後の主要アウトカムに対して反復測定一元配置分散分析を行った後，Bonferroni法による多重比較を実施した．さらに，効果量fを算出した．副次的アウトカムについては，平均値と標準偏差のみ算出し，介入前後で変化量を比較した．統計ソフトはIBM SPSS Statistics 21.0J for Windowsを使用し，危険率は5％とした．なお，本研究は，A病院倫理審査委員会の承認を得ている（承認番号：293-2）．
【結果】介入前，介入後，6ヶ月後の上肢機能評価は，FMA（41.7±10.9，48.5±7.6，47.1±7.5），BBT（19.4±15.8，24.9±15.7，25.9±15.9），ARAT（31.2±20.7，42.8±15.5，39.1±18.2），MALのAOU（2.0±1.4，2.9±1.4，2.7±1.2），MALのQOM（1.6±1.1，2.6±1.1，2.5±1.0）と変化し，すべての項目で有意差を認めた（p<.05, f=.75-1.04）．多重比較の結果，介入前と介入後に有意差を認めたが，介入後と6ヶ月後では有意差は認めなかった．また，介入前後において，遂行度（2.7±1.8，4.8±1.5），満足度（3.0±2.2，4.9±2.0）に変化した．
【考察】先行研究においてCI療法は，課題指向型訓練にTransfer Packageを含むことで短期効果のみならず，良好な長期効果を維持できることが明らかにされてきた（Takebayashi T et al, 2013; Taub E et al, 2013）．本プログラムにおいても，Transfer Packageの実施が麻痺手の参加を促すことに繋がり，良好な長期効果をもたらしたと考えられる．本研究は，自然回復の影響が少ない発症後180日以上経過した生活期脳卒中患者を対象とした低頻度長期間の自主訓練型上肢機能訓練の介入効果を示している点で今後の発展が期待される．
【目的】われわれは，通所リハビリテーションにおいて実施可能なCI療法を基盤とする自主訓練型の上肢機能訓練プログラム（本プログラム）を考案した．本研究の目的は，本プログラムの短期効果および長期効果を検討することである．
【方法】本プログラムは，課題指向型訓練とTransfer Packageを1日3時間，週1回の頻度で6ヶ月間実施するプロトコルとした．適応基準は，Stroke Impairment Assessment Set運動項目のknee-mouth test 2以上かつfinger function test 1b以上の者，脳卒中発症後180日以上経過している者などとした．本研究の対象は，2019年7月から2022年6月末において，本プログラムを実施した10名とした．効果判定は，主要アウトカムとして，Fugl-Meyer Assessmentの上肢運動項目（FMA）， Box and Block Test（BBT），Action Research Arm Test（ARAT），Motor Activity Log（MAL）のAmount of Use（AOU）とQuality of Movement（QOM）を用いた．また，副次的アウトカムとして，対象者が掲げた10項目の目標に対する遂行度と満足度を測定した．統計解析は，介入前，介入後，6ヶ月後の主要アウトカムに対して反復測定一元配置分散分析を行った後，Bonferroni法による多重比較を実施した．さらに，効果量fを算出した．副次的アウトカムについては，平均値と標準偏差のみ算出し，介入前後で変化量を比較した．統計ソフトはIBM SPSS Statistics 21.0J for Windowsを使用し，危険率は5％とした．なお，本研究は，A病院倫理審査委員会の承認を得ている（承認番号：293-2）．
【結果】介入前，介入後，6ヶ月後の上肢機能評価は，FMA（41.7±10.9，48.5±7.6，47.1±7.5），BBT（19.4±15.8，24.9±15.7，25.9±15.9），ARAT（31.2±20.7，42.8±15.5，39.1±18.2），MALのAOU（2.0±1.4，2.9±1.4，2.7±1.2），MALのQOM（1.6±1.1，2.6±1.1，2.5±1.0）と変化し，すべての項目で有意差を認めた（p<.05, f=.75-1.04）．多重比較の結果，介入前と介入後に有意差を認めたが，介入後と6ヶ月後では有意差は認めなかった．また，介入前後において，遂行度（2.7±1.8，4.8±1.5），満足度（3.0±2.2，4.9±2.0）に変化した．
【考察】先行研究においてCI療法は，課題指向型訓練にTransfer Packageを含むことで短期効果のみならず，良好な長期効果を維持できることが明らかにされてきた（Takebayashi T et al, 2013; Taub E et al, 2013）．本プログラムにおいても，Transfer Packageの実施が麻痺手の参加を促すことに繋がり，良好な長期効果をもたらしたと考えられる．本研究は，自然回復の影響が少ない発症後180日以上経過した生活期脳卒中患者を対象とした低頻度長期間の自主訓練型上肢機能訓練の介入効果を示している点で今後の発展が期待される．