[PB-1-1] 両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器症例の入院中から5ヶ月後までのフレイル評価の傾向について
【はじめに】慢性心不全患者の治療法として, 心臓再同期療法 (Cardiac resynchronization therapy:CRT) が知られている. CRTは心不全症状を軽減しQOLを改善するのみではなく, 生命予後を改善させる.Kinugasaらは, 心不全症例のフレイルの合併率の高さを報告しており, 心不全による血液循環障害からフレイルを合併しやすい. また, 社会的フレイルは身体的, 認知的フレイルに先行して現れ, 早期介入が課題となる. ICD症例では, ショック治療の影響から恐怖心や不安が出現しやすいとされる.社会的フレイルを合併する症例へのCRT-D植え込みにより,精神・心理的フレイルに更なる影響を及ぼす可能性がある. 今回, 精神・心理的フレイルが社会的フレイルに対して与える影響を明らかにする事で, 今後の作業療法(OT)のプログラム立案や地域連携の一助となるかもしれない.
【目的】CRT症例に対する入院中から術後5ヶ月後までの継続的なフレイル評価から, その特徴を後方視的に調査すること.
【方法】2019年10月から2023年4月に, 当院で初回のCRT-D植込み術を行った5例を対象とした.フレイル評価を入院時植込み後, 1ヵ月後, 5ヵ月後に実施した. 身体的フレイル評価として, 握力, Short Physical Performance Battery : SPPBを実施し, 認知的フレイル評価としてJapanese version of Montreal Cognitive Assessment : MoCA-Jを実施した. 精神・心理的フレイル評価としてHospital Anxiety and Depression Scale : HADSを実施し, 社会的フレイル評価として, 牧迫による社会的フレイルチェック, 日本版Lubben Social Network Scale : 日本版LSNS-6を実施した. フレイル評価と並行し, 運動指導や生活指導を行った. 多職種介入として, 主科医師は治療やAdvance Care Planning (ACP) の導入や検討を含め介入し, リハビリテーション科医師は, 心肺運動負荷試験 (CPX) から得た生理学的指標を元に運動指導を行った. デバイスナースは遠隔モニタリングの実施や不安感の聴取, 心不全知識尺度を用いた心不全管理の指導, CRT-D植え込み後の生活指導を実施した.
【結果】対象は男性4例, 女性1例, 平均年齢は69±15歳であった. 身体的フレイル評価では, 植え込み側握力は入院中評価にて全例が基準値 (男性28kg, 女性18kg) 以下であり, 5ヵ月後評価にて3例が基準値以下, 2例が基準値以上であった. SPPBは, 女性1例のみ2点と著しい低下を認め, 他の4例は12点であった.
認知的フレイル評価では, MoCA-J にて入院中評価にて基準値 (26/30点) 以下が1例, 1例が欠損していた. 5ヵ月後評価では基準値以下が2例であり, 女性1例は22点と低下を認めた.
精神・心理的フレイル評価では, 入院中のHADSにて1例が「うつ」にて, 疑診となり, 5ヵ月後評価では1例が「うつ」にて, 疑診となった. 女性1例は特徴的な変化を示し, 1ヵ月目にて「不安」「うつ」ともに確診となり, 5ヵ月後評価では改善した.
社会的フレイル評価では, 入院中の牧迫による社会的フレイルチェックにて1例のみプレフレイルであり, 4例がフレイル評価であった. 一方, 5ヵ月後評価では, 1例がプレフレイルであり, 2例がフレイル評価, 2例が健常であった. 日本版LSNS-6では, 入院中と5ヵ月後の2時点で点数の増加を認めた症例が3例であり, 2例が減少した.
【考察】初回CRT-D症例のフレイル評価を行い, 後方視的に考察した. 社会的フレイル合併症例に対するCRT-D植え込み後に, 精神・心理的フレイルを示す場合, 多職種による包括的な介入の継続が必要と考えられる. 今後, 他の症例への適応や5ヵ月後の時点で精神・心理的フレイルが残存した症例への課題解決に向けて更なる検証が必要と考えられる.
【目的】CRT症例に対する入院中から術後5ヶ月後までの継続的なフレイル評価から, その特徴を後方視的に調査すること.
【方法】2019年10月から2023年4月に, 当院で初回のCRT-D植込み術を行った5例を対象とした.フレイル評価を入院時植込み後, 1ヵ月後, 5ヵ月後に実施した. 身体的フレイル評価として, 握力, Short Physical Performance Battery : SPPBを実施し, 認知的フレイル評価としてJapanese version of Montreal Cognitive Assessment : MoCA-Jを実施した. 精神・心理的フレイル評価としてHospital Anxiety and Depression Scale : HADSを実施し, 社会的フレイル評価として, 牧迫による社会的フレイルチェック, 日本版Lubben Social Network Scale : 日本版LSNS-6を実施した. フレイル評価と並行し, 運動指導や生活指導を行った. 多職種介入として, 主科医師は治療やAdvance Care Planning (ACP) の導入や検討を含め介入し, リハビリテーション科医師は, 心肺運動負荷試験 (CPX) から得た生理学的指標を元に運動指導を行った. デバイスナースは遠隔モニタリングの実施や不安感の聴取, 心不全知識尺度を用いた心不全管理の指導, CRT-D植え込み後の生活指導を実施した.
【結果】対象は男性4例, 女性1例, 平均年齢は69±15歳であった. 身体的フレイル評価では, 植え込み側握力は入院中評価にて全例が基準値 (男性28kg, 女性18kg) 以下であり, 5ヵ月後評価にて3例が基準値以下, 2例が基準値以上であった. SPPBは, 女性1例のみ2点と著しい低下を認め, 他の4例は12点であった.
認知的フレイル評価では, MoCA-J にて入院中評価にて基準値 (26/30点) 以下が1例, 1例が欠損していた. 5ヵ月後評価では基準値以下が2例であり, 女性1例は22点と低下を認めた.
精神・心理的フレイル評価では, 入院中のHADSにて1例が「うつ」にて, 疑診となり, 5ヵ月後評価では1例が「うつ」にて, 疑診となった. 女性1例は特徴的な変化を示し, 1ヵ月目にて「不安」「うつ」ともに確診となり, 5ヵ月後評価では改善した.
社会的フレイル評価では, 入院中の牧迫による社会的フレイルチェックにて1例のみプレフレイルであり, 4例がフレイル評価であった. 一方, 5ヵ月後評価では, 1例がプレフレイルであり, 2例がフレイル評価, 2例が健常であった. 日本版LSNS-6では, 入院中と5ヵ月後の2時点で点数の増加を認めた症例が3例であり, 2例が減少した.
【考察】初回CRT-D症例のフレイル評価を行い, 後方視的に考察した. 社会的フレイル合併症例に対するCRT-D植え込み後に, 精神・心理的フレイルを示す場合, 多職種による包括的な介入の継続が必要と考えられる. 今後, 他の症例への適応や5ヵ月後の時点で精神・心理的フレイルが残存した症例への課題解決に向けて更なる検証が必要と考えられる.