[PI-1-1] CO−OPアプローチにより縄跳びの運動スキル獲得と運動に対する動機づけが拡大した一事例
【序論】Cognitive Orientation to daily Occupational Performance(以下,CO-OPアプローチ)はクライアントの作業遂行の問題に対して,クライアント自身で解決法を発見することで,スキルを身につけていく課題指向型アプローチである.発達性協調運動障害(以下,DCD)に対する有用性が報告されており,近年では,自閉症スペクトラム障害(以下,ASD)や脳性麻痺児・者に対する効果も認められている.DCDは不器用さのみならず,自己効力感の低さなどが起こりやすく支援が必要とされている.また,縄跳びは難しい課題として挙げられている.
本報告の目的は,運動の不器用さを持つASD児に対し,CO-OPアプローチを実施し,縄跳び動作の向上とともに,運動に対する動機づけの拡大が得られた要因を明らかにすることである.本報告はご家族から同意を得ている.
【症例紹介】小学校3年生男児.普通級.ASD.知的能力は年齢相応.両親と3人暮らし.ADL自立.不器用さを主訴に外来OT開始.JPAN感覚処理・行為機能検査 Short Version(以下,S-JPAN)を年一回実施.CO-OPアプローチ実施前のS-JPANは,「ひこうき」・「おっとっと」50%-タイル,「けがして大変」26-50%タイル.
CO-OPアプローチ開始.初回評価にて児に目標を確認.縄跳び・大縄跳び・跳び箱・ボール投げが挙がった.その中で,本人の優先順位が高かった縄跳びに介入.介入時の「前跳びを10回連続で跳ぶ」に対する,遂行度4,満足度6,PQRS3.
【方法・経過】月1回(60分)×4回介入.
1回目:CO-OPアプローチを使用し,目標設定を行い,動画を撮影.初回撮影時は連続跳び3回.児とともに動作を確認.ダイナミック遂行分析を実施し,遂行上の問題点を抽出.児から「身体が曲がっている」,「脇が開いている」との発言あり.問題点に対して,認知ストラテジーを使用し,児が中心になって作戦を考え,「身体を起こす作戦」,「脇を締める作戦」,「その場で跳ぶ作戦」を立案.作戦をもとに練習,自主トレーニングを提案.
2回目:連続跳び15回.本人から「30回を目標にする」との発言あり.目標を修正.
3回目:連続跳び21回.作戦確認後27回.体幹屈曲の自己修正あり.実施後,児より「途中でこれじゃダメだって思って変えられたよ」との発言あり.
4回目:連続跳び20回.作戦確認後32回.本人から「初めてこんなに跳べた」との発言あり.
【結果】4回の介入にて目標を達成.遂行度9,満足度10,PQR10と向上.また,児より,「この方法を使えば他のこともできるようになるかも」など運動に対する肯定的な発言あり.また,「今回のやり方で後ろ跳び・ボール投げができるようになりたい」との発言あり.実施後のS-JPANでは「ひこうき」・「けがして大変」50%-タイル,「おっとっと」26-50%タイル.
【考察】介入前後のS-JPANの結果では機能の変化は得られなかった.しかし,目標とする運動スキルの獲得を達成し,運動への動機づけを得ることができた.塩津は「モチベーションや主体性は運動学習(スキル習得)において重要である」と述べている.今回,介入当初から明確な目標がある児が,OTの質問に沿って問題点を分析し,自身で作戦を考えるなど主体的に取り組めたことがスキル獲得に繋がったと考える.また,ヘレン・Jポラタイコらは,「自己効力感はその成功が自分の努力の成果だと思える場合は高まる」と述べている.今回,目標を成功したことで自己効力が高まり,運動への動機づけに繋がったと考える.
本報告の目的は,運動の不器用さを持つASD児に対し,CO-OPアプローチを実施し,縄跳び動作の向上とともに,運動に対する動機づけの拡大が得られた要因を明らかにすることである.本報告はご家族から同意を得ている.
【症例紹介】小学校3年生男児.普通級.ASD.知的能力は年齢相応.両親と3人暮らし.ADL自立.不器用さを主訴に外来OT開始.JPAN感覚処理・行為機能検査 Short Version(以下,S-JPAN)を年一回実施.CO-OPアプローチ実施前のS-JPANは,「ひこうき」・「おっとっと」50%-タイル,「けがして大変」26-50%タイル.
CO-OPアプローチ開始.初回評価にて児に目標を確認.縄跳び・大縄跳び・跳び箱・ボール投げが挙がった.その中で,本人の優先順位が高かった縄跳びに介入.介入時の「前跳びを10回連続で跳ぶ」に対する,遂行度4,満足度6,PQRS3.
【方法・経過】月1回(60分)×4回介入.
1回目:CO-OPアプローチを使用し,目標設定を行い,動画を撮影.初回撮影時は連続跳び3回.児とともに動作を確認.ダイナミック遂行分析を実施し,遂行上の問題点を抽出.児から「身体が曲がっている」,「脇が開いている」との発言あり.問題点に対して,認知ストラテジーを使用し,児が中心になって作戦を考え,「身体を起こす作戦」,「脇を締める作戦」,「その場で跳ぶ作戦」を立案.作戦をもとに練習,自主トレーニングを提案.
2回目:連続跳び15回.本人から「30回を目標にする」との発言あり.目標を修正.
3回目:連続跳び21回.作戦確認後27回.体幹屈曲の自己修正あり.実施後,児より「途中でこれじゃダメだって思って変えられたよ」との発言あり.
4回目:連続跳び20回.作戦確認後32回.本人から「初めてこんなに跳べた」との発言あり.
【結果】4回の介入にて目標を達成.遂行度9,満足度10,PQR10と向上.また,児より,「この方法を使えば他のこともできるようになるかも」など運動に対する肯定的な発言あり.また,「今回のやり方で後ろ跳び・ボール投げができるようになりたい」との発言あり.実施後のS-JPANでは「ひこうき」・「けがして大変」50%-タイル,「おっとっと」26-50%タイル.
【考察】介入前後のS-JPANの結果では機能の変化は得られなかった.しかし,目標とする運動スキルの獲得を達成し,運動への動機づけを得ることができた.塩津は「モチベーションや主体性は運動学習(スキル習得)において重要である」と述べている.今回,介入当初から明確な目標がある児が,OTの質問に沿って問題点を分析し,自身で作戦を考えるなど主体的に取り組めたことがスキル獲得に繋がったと考える.また,ヘレン・Jポラタイコらは,「自己効力感はその成功が自分の努力の成果だと思える場合は高まる」と述べている.今回,目標を成功したことで自己効力が高まり,運動への動機づけに繋がったと考える.