[PK-1-1] 慢性呼吸器疾患患者に対しCO-OPを通して本人の役割である調理獲得に向けて関わった事例
【はじめに】CO-OPとは,クライエント(以下,CL)が選んだ活動の遂行を通して,スキルを獲得していくアプローチである.発達領域を対象に開発されたが,様々な疾患でも効果は示されている.今回,びまん性汎細気管支炎(以下,DPB)による喀血により,気管カニューレの挿管に至ったCLに対し,CO-OPを用い,本人が希望する調理獲得に向け関わった.本報告の目的は,慢性呼吸器疾患患者に対する役割再獲得の為のCO-OPの効果的な使用について検討し,今後の作業療法の一助とすることである.尚,今回の報告に際し同意を得ている.
【事例紹介】A氏70歳代女性.DPBによる喀血により,急性期病院での治療を経て,X年Y月にリハ目的で当院入院となる.入院前は,夫・長男と3人暮らしで,主婦として家事全般を担っていた.しかし,徐々に呼吸困難感がみられ,入院直前は,調理は夫が担うなど協力を得て過ごしていた.
【評価】COPMでは,本人から「家族の為に1人で調理ができるようになりたい」と希望が聞かれ,重要度10,遂行度3,満足度5であった.作業遂行の質を評価する為に遂行の質評定スケール(以下,PQRS)に加え,AMPSを用いた.PQRSは3点で,AMPSは,調理に関する課題(①野菜スープ②食器を手で洗う)を実施した結果,運動技能1.1logit,プロセス技能1.5logitであった.認知機能が良好の為,運動技能の問題を自ら解決することができれば,環境が変わっても調理を1人で少しでも楽に行うことが可能になると考え,CO-OPを用いた実践を施行した.
【介入】食器洗いなどの立位作業を毎日,調理は週1回を1カ月間実施した.ダイナミック遂行分析(以下,DPA)を実施した結果,包丁で硬い野菜を切る工程で息んで行ってしまうことや炒める工程も立位で行うことで疲労が強まり,1時間の作業で9回の休憩を要した.また,O2 0.5ℓ送気で,作業後SpO2が 85%まで低下がみられた.そこで「調理」の問題に対し,CL自ら領域特異的ストラテジー(以下,DSS)を発見できるよう,OTRは言語的ガイドを用い関わった.立位で野菜を切る際,息んでしまい強く疲労を感じる点に対し,CLは 「座って野菜を切る」というDSSを計画し遂行した.しかし机の高さが高いと力が入りにくく切りにくいという問題が生じ,次なる戦略を検討した.CLから「シンクに寄り掛かりながら行う」「硬い野菜は電子レンジで柔らかくしてから切る」といったDSSを計画し実施した結果,「前より楽にできる」と発言の変化に繋がった.
【結果】介入から1カ月後,COPMは遂行度9,満足度9と向上し,「だいぶ楽にできるようになって嬉しい」と発言が聞かれた.PQRS 10点,AMPS(①炒飯②食器を手で洗い,乾燥させ,片付ける)は,運動技能1.5logit,プロセス技能1.7logitであり,作業中一度も休憩せず,実施が可能となり退院となった.退院2カ月後に訪問したところ,自身のペースで毎日調理ができており,洗濯なども自らやり方を工夫し行え,主婦としての役割を再開していた.
【考察】成人領域におけるCO-OPを用いた事例では,作業遂行を中心としたアウトカムの改善が報告されている.今回の結果より,AMPSの運動技能が0.3logitの改善があった.CO-OPを用いた直接的な介入を通して,OTRによる言語的ガイドから,CL自身が問題に気づき自ら戦略を立てることが可能となり,作業遂行の改善に繋がった.また,退院後も活用できていることから今岡ら(2021)は,認知的柔軟性が向上したことと,スキルが転移したことによるものと述べている.したがって,CO-OPの使用は,スキルの習得と転移による関連したADLスキルの習得に有用である可能性が示唆される.
【事例紹介】A氏70歳代女性.DPBによる喀血により,急性期病院での治療を経て,X年Y月にリハ目的で当院入院となる.入院前は,夫・長男と3人暮らしで,主婦として家事全般を担っていた.しかし,徐々に呼吸困難感がみられ,入院直前は,調理は夫が担うなど協力を得て過ごしていた.
【評価】COPMでは,本人から「家族の為に1人で調理ができるようになりたい」と希望が聞かれ,重要度10,遂行度3,満足度5であった.作業遂行の質を評価する為に遂行の質評定スケール(以下,PQRS)に加え,AMPSを用いた.PQRSは3点で,AMPSは,調理に関する課題(①野菜スープ②食器を手で洗う)を実施した結果,運動技能1.1logit,プロセス技能1.5logitであった.認知機能が良好の為,運動技能の問題を自ら解決することができれば,環境が変わっても調理を1人で少しでも楽に行うことが可能になると考え,CO-OPを用いた実践を施行した.
【介入】食器洗いなどの立位作業を毎日,調理は週1回を1カ月間実施した.ダイナミック遂行分析(以下,DPA)を実施した結果,包丁で硬い野菜を切る工程で息んで行ってしまうことや炒める工程も立位で行うことで疲労が強まり,1時間の作業で9回の休憩を要した.また,O2 0.5ℓ送気で,作業後SpO2が 85%まで低下がみられた.そこで「調理」の問題に対し,CL自ら領域特異的ストラテジー(以下,DSS)を発見できるよう,OTRは言語的ガイドを用い関わった.立位で野菜を切る際,息んでしまい強く疲労を感じる点に対し,CLは 「座って野菜を切る」というDSSを計画し遂行した.しかし机の高さが高いと力が入りにくく切りにくいという問題が生じ,次なる戦略を検討した.CLから「シンクに寄り掛かりながら行う」「硬い野菜は電子レンジで柔らかくしてから切る」といったDSSを計画し実施した結果,「前より楽にできる」と発言の変化に繋がった.
【結果】介入から1カ月後,COPMは遂行度9,満足度9と向上し,「だいぶ楽にできるようになって嬉しい」と発言が聞かれた.PQRS 10点,AMPS(①炒飯②食器を手で洗い,乾燥させ,片付ける)は,運動技能1.5logit,プロセス技能1.7logitであり,作業中一度も休憩せず,実施が可能となり退院となった.退院2カ月後に訪問したところ,自身のペースで毎日調理ができており,洗濯なども自らやり方を工夫し行え,主婦としての役割を再開していた.
【考察】成人領域におけるCO-OPを用いた事例では,作業遂行を中心としたアウトカムの改善が報告されている.今回の結果より,AMPSの運動技能が0.3logitの改善があった.CO-OPを用いた直接的な介入を通して,OTRによる言語的ガイドから,CL自身が問題に気づき自ら戦略を立てることが可能となり,作業遂行の改善に繋がった.また,退院後も活用できていることから今岡ら(2021)は,認知的柔軟性が向上したことと,スキルが転移したことによるものと述べている.したがって,CO-OPの使用は,スキルの習得と転移による関連したADLスキルの習得に有用である可能性が示唆される.