日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS02_29AM2] Data Assimilation in Earth Sciences

2014年4月29日(火) 11:00 〜 12:41 314 (3F)

コンビーナ:*石川 裕彦(京都大学防災研究所)、余田 成男(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、榎本 剛(京都大学防災研究所)、パク ソンキ(梨花女子大学)、呉 俊傑(国立台湾大学)、宮崎 真一(京都大学理学研究科)、石川 洋一(海洋研究開発機構)、座長:榎本 剛(京都大学防災研究所)

11:35 〜 11:50

[AAS02-09] LETKFの双方向ネストシステムを用いたGNSS稠密観測で観測した水蒸気データの同化実験

*大井川 正憲1津田 敏隆1Realini Eugenio1岩城 悠也1瀬古 弘2小司 禎教2佐藤 一敏3 (1.京都大学生存圏研究所、2.気象庁気象研究所、3.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:データ同化, 局地豪雨, GNSS稠密観測, nested LETKF

局地的な豪雨現象の予報精度を向上させるには、数値計算モデルの高解像度や高精度化に加え、高密度・高頻度な観測データを同化して、より詳細で正確な初期値を作成する必要がある。特に、水蒸気分布は、積乱雲の発生や発達に大きく寄与するため、これまでに、豪雨を対象にした同化実験により、GNSS(Global Navigation Satellite System)測位によって得られた可降水量(受信機上空の鉛直積算水蒸気量)が、数値予報の初期値の水蒸気分布を改善し、降水予報の精度を向上させたという報告がなされている。現在、気象庁では、国土地理院が運用している全国GNSS連続観測システム(GEONET、水平分解能約20 km)で観測された可降水量を同化しているが、今後、さらに数値モデルや解析のスケールが高解像度化した場合には、より高密度・高頻度な可降水量データが必要になると期待される。そこで、我々は京都大学宇治キャンパスの西方の領域で、GNSS受信機を1㎞間隔に配置した稠密観測を行い (Sato et al., 2013)、その観測網で得られた可降水量データを用いて、豪雨の降水予報に対する高密度・高頻度なデータのインパクトを調べた。  本報告の同化実験に用いる同化システムは、アンサンブルカルマンフィルタの一種である局所アンサンブル変換カルマンフィルタ(LETKF)の双方向ネスティングシステムである(Seko et al., 2013)。実験の対象事例として、6時間で約260 mmの降水をもたらした2012年8月14日の宇治豪雨を選んだ。同化実験では、まず、水平解像度15 kmの親モデルにGEONETの可降水量データを6時間の解析ウィンドウで1時間毎に同化し、その後、ネスティングした水平解像度1.875 kmの子モデルで、GNSS稠密観測で得られた可降水量データを1時間の同化ウィンドウで10分毎に同化した。これらの同化実験では、可降水量データに加えて、気象庁の現業で利用されている地表及び高層観測データも同化している。  親及び子モデルに可降水量データを同化しなかった実験では、再現された降水域は、実況に比べて、位置がずれていて、降水強度も弱いものであった。親モデルにGEONETの可降水量データを同化し、子モデルに可降水量データを同化しなかった実験では、降水強度には変化が見られなかったが、降水域の位置ずれが修正されて実況に近づいた。さらに、親モデルにGEONETの可降水量データを同化し、子モデルにGNSS稠密観測の可降水量を同化すると、位置ずれに加えて、降水強度も修正された。  以上の結果は、高密度・高頻度な可降水量データの局地的豪雨の予報に対する有効性を示している。今後は、稠密観測網の観測点数を変化させた同化実験を行って、降水予報に対する高密度な可降水量データの効果の現れ方について調べる予定である。発表では、可降水量に加え、受信機から衛星までの視線方向の積算水蒸気量の同化実験結果についても報告する予定である。