日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC31_29PO1] 雪氷学

2014年4月29日(火) 14:00 〜 15:15 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*鈴木 啓助(信州大学理学部物質循環学科)、兒玉 裕二(国立極地研究所)

14:00 〜 15:15

[ACC31-P04] 数値標高モデル(DEM)を用いたヒマラヤの氷河下流域における周辺地形の特徴量に関する比較

*鈴木 亮平

キーワード:数値標高モデル, 画像処理, 氷河融解速度, 放射収支, 山岳氷河, ヒマラヤ

山岳氷河の表面における放射収支(正味放射量)は、周辺の複雑な地形によって、空間的に不均一であることが知られている。放射収支は、これまでの現地観測によって、ヒマラヤに分布する氷河の融解熱量として、大きな割合を占めることが知られている。一方、ヒマラヤの南斜面においては、氷河下流域の氷の表面が、岩屑(デブリ)によって覆われた「デブリ氷河」が数多く分布する。このような氷河においては、岩屑の熱特性分布が、氷河の融解速度の空間分布に直結する。それらの空間分布を正確に推定するためには、氷河の消耗域における放射収支に対して、氷河周辺の地形が与える影響を考慮する必要がある。しかしながら、ヒマラヤにおいては、これらの現象を現地観測によって広域的に明らかにすることは、困難である。したがって、遠隔的・広域的な観測手法として、衛星リモートセンシングの応用が有効である。
 本研究では、一例として、2002年以降に現地観測の実績があるブータン・ルナナ地方の数値標高モデル(DEM)を用い、氷河周辺の地形が放射収支に与える影響を推定することを目的とする。同地域に分布する複数の氷河における下流域表面の各地点(画素)について、周囲の地形と空との境界を見込む方位角・仰角の分布を近似的に算出し、特徴量として比較した。この特徴量は開度を応用した概念であり、周囲が水平面に近いほど1に近く、反対に、急峻な壁面に囲われた窪地であるほど0に近づく。第一段階の試算によれば、8方位、かつ、半径約4.5km内を対象とした場合、Thorthormi、Lugge、LuggeⅡ氷河の下流域における値は、0.7から0.9の範囲に分布した。
 この結果は、DEMの精度だけでなく、その上を走査するラスタ画像処理の方法に強く依存する。すなわち、着目する画素(地点)において、走査する際の方位角の刻み値、視線方向の走査半径、半径の増分値などの条件によって変化する。このため、今回の発表では、複数の実験結果を事例として示し、同地域における放射収支の空間分布への影響について考察・報告する予定である。