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[ACG35-05] 淀川河口での海洋性植物プランクトン濃度の変動要因
キーワード:淀川, 河口, 数値生態系モデル, 植物プランクトン, Alexandrium tamarense
2007年、2011年及び2013年に淀川下流で麻痺性貝毒が検出され、シジミの出荷が停止された。この原因種は海洋性有毒植物プランクトンのAlexandrium tamarenseであるが、その増殖・赤潮形成原因や抑制方法は明らかになっていない。そこで、2012年2月2~3日にかけて淀川河口で観測を実施し、得られたデータを使用して数値生態系モデルによる植物プランクトン濃度の変動要因解析を行った。観測日の潮位変動にあわせて、CTD及びADCP観測と採水を実施した。採水では、栄養塩、クロロフィル濃度に加え、A. tamarenseの細胞密度も計測したが、この年は極めて少なかった。河口の下層から海水が遡上し、表層では淡水が流出する、典型的な河口循環流の構造が観測された。数値生態系モデルでは、河口2800mを、ほぼ淡水の表層0~50cm、密度躍層のある中層0.5~1.5m、ほぼ海水の底層1.5m~河床の鉛直三層に分けた。下層は潮位により層厚が変化する。各層に、栄養塩、植物プランクトン、溶存有機物、懸濁物の5形態を想定し、形態間の生化学過程(光合成、枯死、分解など)を定式化して、各形態の濃度変動を計算した。同時にA. tamarenseも計算した。これには、日周鉛直移動、光合成での塩分制限と溶存有機物利用、低塩下による枯死を加味した。各層での植物プランクトン濃度の時間変動は、観測値を概ね再現した。植物プランクトンは、上層では上流から下流へ、下層では下流から上流へ輸送されており、鉛直輸送は水平輸送に比べ極めて少なく、河口での増殖は水平輸送の1割程度だった。一方A. tamarenseは、下層で下流から輸送された量の約半分が上流へ輸送され、残りは日周鉛直輸送と鉛直拡散によって上層まで輸送される。これに上流から中層に戻ってくる量をあわせて、半分は下流へ流出し、半分は上層の低塩下で枯死する。河口での増殖は下流からの流入量の5%程度だった。すなわち淀川河口における海洋性植物プランクトンは、ここでの増殖は少なく、主として下流から輸送されている事が明らかとなった。また遊泳能力のない植物プランクトンのほとんどは、河口循環流による水平移流で輸送されるが、日周鉛直移動を行うA. tamarenseは、下流から輸送された量の約27%だけが上流へ輸送され、約36%は上・中層から下流に流出し、約36%は上層で枯死する。上流へのA. tamarense輸送を制限するには、河口循環流を弱くする事が有効である。