日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG36_30PO1] 北極域の科学

2014年4月30日(水) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*齊藤 誠一(北海道大学大学院水産科学研究院)、猪上 淳(国立極地研究所)、原田 尚美((独)海洋研究開発機構)、鈴木 力英(海洋研究開発機構 地球環境変動領域)

18:15 〜 19:30

[ACG36-P07] 北東シベリアインディギルカ川低地における土壌有機物の無機化速度

*新宮原 諒1田辺 真一2鷹野 真也1Ivan Bragin3村瀬 潤4鄭 峻介5Trofim C. Maximov6杉本 敦子7 (1.北海道大学大学院環境科学院、2.北海道大学理学部、3.Far East Geological Inst. FEB RAS, Vladivostok, Russia、4.名古屋大学大学院生命農学研究科、5.国立極地研究所、6.Inst. for Biol. Problems of Cryolithozone SB RAS, Yakutsk, Russia、7.北海道大学大学院地球環境科学研究院)

キーワード:メタン, 二酸化炭素, 培養実験, 東シベリア, タイガ‐ツンドラ境界, 安定同位体比

北極域には多量の土壌有機炭素が蓄積されている。北極域の温暖化増幅のもと、地温の上昇や活動層の深化が起これば、土壌有機炭素の分解が促進され、温室効果気体であるCO2およびCH4の放出量が増大する懸念がある。CO2やCH4の放出速度を決める主要な因子である有機物の分解速度は、有機物の量だけでなく有機物の質にも依存すると考えられる。本研究では北東シベリアインディギルカ川低地の表層土壌層を一定温度(5, 10 ℃)で培養することにより、CH4およびCO2の生成速度を評価し、土壌有機物の分解性を検討した。
土壌層はチョクルダ(70.62 N, 147.90 E)の周辺域で採取した。この地域は東シベリアの連続的永久凍土帯の中に位置し、タイガ林とツンドラの境界域にあたる。カラマツが生育し比較的乾燥した立地のマウンドと、土壌水分が高くスゲやミズゴケが生育する湿地の計7か所において深度約10-60 cmの土壌層を採取した。7月に採取した融解層(10, 20, 30 cm)を現地で8日間嫌気培養したほか、6月の早夏に採取した融解前の土壌層(13-62 cm)を日本へ輸送し、34-42日間の嫌気培養および好気培養を行った。採取した土壌は、この地域の活動層(約20-50 cm)と最上部の永久凍土層を含む。
マウンドの土壌ではCO2は生成したもののCH4生成が確認されず、通常乾燥した地点ではメタン菌数が少なく、嫌気条件に変化してもCH4生成の起こらないことが示唆された。一方湿地の土壌はCH4生成が検出されたうえ(0-0.88 μmol (g dry soil)-1 day-1)、特に浅い深度でCO2とともに活発な生成が見られ、易分解性の有機物が表層で多いことに対応していると考えられる。CH4生成速度の温度依存性は、表層(約10-40 cm)において10℃での生成速度が5℃の0.9-1.1倍であったのに対し活動層の中下部(32-50 cm)では1.9-3.3倍となり、表層よりも活動層中下部で大きいことが明らかとなった。