日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG37_28PM2] 熱帯におけるマルチスケール大気海洋相互作用現象

2014年4月28日(月) 16:15 〜 17:59 423 (4F)

コンビーナ:*名倉 元樹((独) 海洋研究開発機構)、長谷川 拓也(独立行政法人海洋研究開発機構)、清木 亜矢子(海洋研究開発機構)、東塚 知己(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、時長 宏樹(ハワイ大学国際太平洋研究センター)、大庭 雅道(電力中央研究所 環境科学研究所 大気海洋環境領域)、今田 由紀子(東京大学大気海洋研究所)、座長:東塚 知己(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、大庭 雅道(電力中央研究所 環境科学研究所 大気海洋環境領域)

16:35 〜 16:50

[ACG37-14] ENSOの季節予測における熱帯太平洋‐熱帯北大西洋間の大気海洋相互作用の重要性

山崎 邦子1今田 由紀子1渡部 雅浩1 (1.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:エルニーニョ・南方振動, 熱帯北大西洋大気海洋相互作用, 季節予測, 大気海洋結合大循環モデル

観測や気候モデルをベースとした研究から、大西洋の海水温偏差と熱帯太平洋のエルニーニョ・南方振動(ENSO)との間に相互作用が存在することが知られている。Ham et al. (2013) では、春先の熱帯北大西洋の海面水温の暖水偏差が、引き続く秋から冬の熱帯太平洋においてラニーニャ傾向をもたらすことを、理想化したモデル実験によって示した。しかし、熱帯太平洋内部でENSO自身の周期を維持する遷移プロセスが存在する状況下で、Hamらが提唱する熱帯北大西洋からの影響がどの程度有意な影響を及ぼすかについては依然として定かではない。そこで本研究では、熱帯北大西洋の海面水温からの寄与が、過去に実際に起こった代表的なENSOの遷移プロセスにおいてどの程度影響を与えていたかを定量的に見積もる試みを行った。大気海洋結合大循環モデル(AOGCM)によるアンサンブル事後季節予測システムを用いて、北大西洋の海面水温偏差の影響を遮断した感度実験を実施した結果、過去の代表的なEl NinoからLa Ninaへの遷移過程において北大西洋の海面水温偏差が重要な役割を果たしていたことが明らかとなった。さらに先行するエルニーニョ発達時に熱帯太平洋における海洋から大気へのフィードバックを遮断する追加の感度実験の結果から、北大西洋における海面水温の暖水偏差が成長するには先行するエルニーニョの存在が重要である可能性が示された。AOGCMを用いた季節予測研究においてはENSOが季節予測可能性の鍵であることから、熱帯太平洋の再現性向上を主眼においた予測システムの改良が行われてきたが、本研究の結果から、モデルにおける大西洋の大気海洋結合過程の再現性が季節予測性能を向上させる重要な要因であることが示唆された。参考文献:Ham, Y.-G., J.-S. Kug, J.-Y. Park, and F.-F. Jin, 2013: Sea surface temperature in the north tropical Atlantic as a trigger for El Nino/Sourthern Oscillation events, Nature Geoscience, 6, 112-116