日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG38_28AM1] 地球環境関連データセット博覧会

2014年4月28日(月) 09:00 〜 10:45 213 (2F)

コンビーナ:*樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、茂木 耕作(独立行政法人 海洋研究開発機構 地球環境変動領域)、芳村 圭(東京大学大気海洋研究所)、釜堀 弘隆(気象研究所)、川原 慎太郎(海洋研究開発機構)、座長:川原 慎太郎(海洋研究開発機構)、茂木 耕作(独立行政法人 海洋研究開発機構 地球環境変動領域)

10:15 〜 10:30

[ACG38-06] WRFを結合した陸面・雲の衛星マイクロ波データ同化システムの開発と関東域への適用

*瀬戸 里枝1Rasmy Mohamed1小池 俊雄1 (1.東京大学大学院工学系研究科)

キーワード:雲, 土壌水分, 衛星マイクロ波データ同化, 関東域, 豪雨予測

洪水予測・警報システムや貯水池操作の最適化を実現するには、数時間先に降水域が河川流域の中に生じるか否か、という細かな時空間分布の予測が極めて重要である。そこで、降水の生じる‘位置‘の予測精度向上に焦点を置いたシステム開発として、降水を生じる雲を直接初期値として同化することが有効と考えられる。雲はマイクロ波によって衛星から観測することが可能であるが、陸面の射出が雲に比べて非常に強いことから、陸上の雲を直接観測することは困難である。一方で近年、複数の波長での適用が可能な陸面のマイクロ波放射伝達モデルが開発され、観測の技術も発展したことで、大気と陸面の結合系において、異なる対象に感度を持つ複数の波長を用いることで、陸面の射出を適切に表現するための陸面のデータ同化と、陸面の射出を下部境界条件とした、陸上の雲の観測・同化を同時に行うことが可能となった。本研究では、このような発想でRasmy et al.,2011によって開発された初めての大気―陸面結合衛星データ同化システムCALDASのシステム構成を基に、より汎用性の高いコミュニティモデルであるWRFを結合した大気―陸面結合衛星データ同化システム(CALDAS-WRF)を開発・改良し、関東域に初めて適用した。 CALDAS-WRFは、大気モデルWRF、陸面モデルSiB2、土壌の放射伝達モデルとアンサンブル・カルマンフィルタから成る陸面データ同化部分、大気の放射伝達モデルと1DVARから成る雲データ同化部分で構成され、Aqua衛星搭載の改良型高性能マイクロ波放射計(AMSR-E)の観測を同化する。システム全体はメインプログラムであるCouplerによって統括的にコントロールされる。 システムの流れは、まず全体の初期化に続いて、大気モデルWRFの積分計算、大気モデルからのForcingを受けて陸面モデルSiB2のアンサンブル予測計算を観測が得られるまで繰り返し行う。AMSR-Eによる観測が得られると長波長マイクロ波の観測とアンサンブル・カルマンフィルタによって土壌水分の最適値を推定する。その後、推定された土壌水分量から短波長の陸面射出を算出し、それを背景情報として1次元の変分法と最小値探索アルゴリズムShuffled Complex Evolution (SCE)によって雲の情報を抽出して同化し、大気モデルの計算に戻る。 CALDAS-WRFを関東周辺での豪雨イベントへ適用した結果、CALDAS-WRFによって衛星観測から雲の情報を適切に抽出し、雲の分布を非常に良く再現することができた。更に、大気モデルの雲微物理スキームを通して、適切な位置に降水を生じさせることにも成功し、局地的に物理的整合性のとれた大気場をも形成した。しかしながら、降水量についてはまだ観測の強度を再現するには至らず、降水の継続時間も不十分であり、今後の改善を目指したい。