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[AHW26-10] 神奈川県足柄平野における自噴井湧水量の季節変化について
キーワード:自噴井, 足柄平野, 自噴量, 季節変化, 水田灌漑
はじめに島国であるわが国にとって、都市の多くが沿岸部の沖積平野に位置している。その沖積平野では、上部の扇状地や山地等において涵養された被圧地下水が、河川水とともに、工業用水源や水道水源として利用されている。高度経済成長期における都市域での過剰な地下水利用は、典型7公害のひとつとして挙げられた地盤沈下や、湧水の枯渇などの地下水障害の原因となった。神奈川県西部足柄平野中・下流域に分布する自噴井湧水域においても、1960年代以降、自噴域の減少傾向が報告されている。また、2011年の調査により、足柄平野全体で自噴井戸は1,000本以上あり、平野全体から、一日あたり約五万トンの湧水が、自噴井から湧出していることが分かった。しかし、自噴量の季節変化については、水田への灌漑との関連が指摘されているが、詳細については不明な点が多い。そこで本研究では、神奈川県西部地域足柄平野の中・下部に広く分布する自噴井湧水について、一年間にわたる調査を行い、自噴井から湧出する湧水量の季節変化を明らかにした。調査結果及び考察調査は、2013年6月から一年間、205井の自噴井を対象に毎月一回の調査を行い、自噴量、水温、電気伝導度、pH、及び溶存イオン濃度の測定を行った。205地点において毎月1回測定した自噴量は、地点ごとの自噴量のばらつきが大きかったため、各月の自噴量を標準得点化し、クラスター分析により、自噴量の変化パターンが似た地点ごとにグループ分けを行った。その結果、自噴量の変化パターンは、水田への灌漑期に増加する「灌漑期対応型」と、年間を通して顕著な変化傾向が見られない「灌漑期非対応型」に分類することができた。また、上記の方法で分類した「灌漑期対応型」の自噴井は酒匂川の西側に多く分布し、「灌漑期非対応型」は、酒匂川の東側に多く分布していた。