日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW27_1AM1] 水循環・水環境

2014年5月1日(木) 09:00 〜 10:45 424 (4F)

コンビーナ:*林 武司(秋田大学教育文化学部)、内田 洋平((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)、樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)、座長:林 武司(秋田大学教育文化学部)、内田 洋平((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)、樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)

10:15 〜 10:30

[AHW27-06] 山地源流域におけるマルチ・トレーサー手法による湧水・地下水・河川水の滞留時間の推定

*池田 隼人1辻村 真貴2勝山 正則3長野 龍平4 (1.筑波大学生命環境学群地球学類、2.筑波大学生命環境系、3.京都大学学祭融合教育研究推進センター グローバル生存学連携大学院ユニット、4.京都大学大学院農学研究科)

キーワード:マルチ・トレーサー法, 平均滞留時間, 安定同位体, フロン類

源流域における渓流水等の平均滞留時間を求めることは基本的に重要であるが, 用いるトレーサーの種類により, 推定される滞留時間の値に差が生じることが指摘されている. しかしながら, 複数のトレーサーを適用し, 求められる滞留時間を水文プロセス等の視点から比較検討した研究は従来少ない.そこで本研究では, 山地源流域においてマルチ・トレーサー法により滞留時間を推定し, 空間分布を明らかにすること, また水文特性と滞留時間変動との関係性を明らかにすることを目的とした. 滋賀県南部に位置する桐生水文試験地において, 2013 年6 月, 8 月, 10 月の計 3 回, 現地調査, 及び採水を行い, 一般水質, SiO2, 溶存フロン濃度, 水素・酸素安定同位体の分析を行った. 次に水中のフロン濃度と大気中の北半球平均フロン濃度を用いて平均滞留時間の推定を行った. また本流域において2008 年から2012 年まで毎月測定されている, 降水と渓流水, 地下水の安定同位体比を用いて, それらの季節変化から平均滞留時間を推定した. 安定同位体により推定された河川水, 地下水の平均滞留時間は約2.8から4.4 年と推定された. またフロン濃度を用いた方法では湧水, 地下水の滞留時間は, 涵養温度を各試料の水温とした場合に 1.5 から8.5 年, 及び15 から23 年と得られた. また滞留時間との関係性が示唆される Na+ 濃度と滞留時間の関係から, 大気中フロン濃度の減少過程で得られる, 短い滞留時間である可能性が高いことが示された. それぞれの手法により得られた結果を総合的に検討した結果, 本流域の湧水, 地下水, 河川水の滞留時間は約 1.5 から 8.5 年であると推測された. この結果は, 従来, 安定同位体によって得られたそれと整合的であるが, フロンによる推定値は, より大きな時空間変動を示した. これは異なる滞留時間, 及び流動経路からなる水の混合過程により引き起こされていることが推測される. 50 年程度の時間情報を有するフロンは, こうした現象をより的確に再現しているものと示唆される.