日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW28_30PM2] 流域の水及び物質の輸送と循環-源流域から沿岸域まで-

2014年4月30日(水) 16:15 〜 17:45 314 (3F)

コンビーナ:*知北 和久(北海道大学大学院理学研究院自然史科学部門)、入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、小野寺 真一(広島大学大学院総合科学研究科)、中屋 眞司(信州大学工学部土木工学科)、小林 政広(独立行政法人森林総合研究所)、齋藤 光代(岡山大学大学院環境生命科学研究科)、吉川 省子(農業環境技術研究所)、奥田 昇(京都大学生態学研究センター)、座長:小野寺 真一(広島大学大学院総合科学研究科)

17:00 〜 17:15

[AHW28-25] ベトナム・メコンデルタの水位変動解析

*藤原 洋一1星川 圭介2藤井 秀人3横山 繁樹3長野 宇規4小寺 昭彦4 (1.石川県立大学、2.京都大学、3.国際農林水産業研究センター、4.神戸大学)

キーワード:メコンデルタ, 水位上昇, 洪水, 海面上昇, 地盤沈下, 輪中堤防

ベトナム・メコンデルタは、洪水の増加、海面上昇、地盤沈下などといった影響を大きく受けることが懸念されている。近年、デルタ内における河川水位上昇が報告されているが、その原因については必ずしも明らかになっていない。そこで、本研究では、河川水位の上昇の原因として、(1)輪中堤防(フルダイク)の増設による氾濫域の減少に伴う洪水緩和機能の低下、(2)海面上昇、(3)地盤沈下の3つの要因を考え、デルタにおける水位変動の解析を行った。解析にはメコン河委員会が管理している21地点の水位データを利用した。なお、解析期間は、1987年から2006年の20年間である。まず、年間の水位差(年間の最高水位と年間の最低水位の差)と日水位差の年平均を利用して、流況特性から見てデルタを分類した。さらに、観測日平均水位データを利用して、年最高水位、年最低水位を抽出し、それぞれのトレンドを求めた。土地利用変化に関しては、輪中堤防が増設されたエリアは水稲3期作、氾濫原は水稲2期作エリアと考えることができる。そこで、それぞれの面積を算定するためにMODIS/TerraのプロダクトであるMOD13Q1 のNDVI(空間解像度:250m、時間解像度:16日)を利用した。まず、流況からみたデルタの分類図を見たところ、河口に近い4地点は、潮位の影響の方が季節変動より大きく、海面上昇の影響を大きく受けやすいことがわかった。さらに、Can Tho、My Thoといった河口から数十キロ内陸に入った地点であっても、上流からの洪水よりも潮位変動を大きく受けることが注目された。なお、河口から120キロ以上内陸(デルタ北部)では、潮位よりも上流からの流量の影響を受けていることがわかった。年最高水位、最低水位に関しては、デルタ中部から河口において、最高水位、最低水位が有意に増加トレンドであった。土地利用変化の推定結果によると、堤防で囲まれた3期作エリアが急速に拡大しており、とくに、カンボジアとの国境付近のアンジャン省、ドンタップ省における面積の拡大が顕著であった。これらの結果を重ね合わせたところ、最高水位の上昇とダイク拡大地域はほとんど一致していない、最低水位の上昇と最高水位の上昇が見られるゾーンは、季節的な洪水の影響より潮位の影響が大きいゾーンであることから、最高水位の上昇には、相対的な海面水位の上昇の影響が大きいと考えられた。次いで、相対的な海面上昇量は、地盤沈下量と海面上昇に分離できると仮定して、それぞれの変化量を推定した。デルタ東部の潮位観測所の近年のトレンドを調べたところ、2.4mm/yearの海面上昇が検出された。最低水位の上昇量について、有意水準5%で有意と判定された地点における上昇量は7.3mm/yearであったことから、おおよそ、4.9mm/yearが地盤沈下と推定できる。さらに、7.3mm/yearの上昇量によって、河川水位の生起確率がどのように変化したのか試算した。年最高水位のデータから、最高水位のトレンド成分を除去することによって、海面上昇および地盤沈下が生じなかった場合のデータを復元した。そして、復元したデータセットによる確率水位を計算し、50年確率および100年確率の水位が、相対的な地盤沈下によって何年確率になったのかを求めた。その結果、50年確率の水位は平均で11.7年確率に、100年確率の水位は21.2年確率になっていることが分かった。