日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-BG 地球生命科学・地圏生物圏相互作用

[B-BG21_1AM1] 熱帯ー亜熱帯沿岸生態系における物質循環

2014年5月1日(木) 09:00 〜 10:30 213 (2F)

コンビーナ:*渡邉 敦(東京工業大学 大学院情報理工学研究科 情報環境学専攻)、藤田 和彦(琉球大学理学部物質地球科学科)、本郷 宙軌(琉球大学理学部物質地球科学科)、座長:渡邉 敦(東京工業大学 大学院情報理工学研究科 情報環境学専攻)、藤田 和彦(琉球大学理学部物質地球科学科)、本郷 宙軌(琉球大学理学部物質地球科学科)

10:00 〜 10:15

[BBG21-05] 沿岸生態系における炭素フロー:ブルーカーボン研究

*桑江 朝比呂1所 立樹1渡辺 謙太1三好 英一1茂木 博匡1田多 一史2 (1.(独)港湾空港技術研究所、2.中電技術コンサルタント株式会社)

キーワード:気候変動, 炭素隔離, 炭素貯留, ブルーカーボン, 海草場, 内湾

これまで海洋によるCO2吸収は,外洋で発揮されていて,陸域からの負荷を受ける沿岸海域では有機物が分解する場,すなわちCO2の放出源と考えられてきた.とりわけ,都市河川が流入し人間活動の影響を受けた内湾は,大量のCO2放出を伴う富栄養化の進んだ環境価値の低い場所であるとの認識が強かった.ところが近年,沿岸生態系では,熱帯林に匹敵もしくはそれを上回る高い炭素貯留速度の事例が示されるようになってきた.したがって,沿岸海域はまさに炭素のmissing sinkとなっている可能性がある.国連環境計画(UNEP)は,海洋で固定される炭素を「ブルーカーボン」と新たに称し,特に沿岸海域の堆積物中に貯留される炭素ストックの重要性をアピールした.そこで,「沿岸海域が大気中CO2の吸収源」であるという,新たな仮説を検証することは重要であると考えられるものの,陸・河川・外洋の影響を受ける複雑な場という沿岸海域の特性により,実証には手法・労力・解析上の困難が伴う.したがって,「未知の炭素フロー」の検証作業はすすんでいない.本研究プロジェクトでは,河川-浅海域-沿岸海域,さらに大気-海水-海底堆積物を含めた広範なかつ長期的な炭素輸送像全体を沿岸生態系ブルーカーボンの研究対象とし,大気・海水・堆積物における全相(気体・液体・固体)の全炭素(無機態・有機態)の動態(ストック・フロー)を抜け落ちなく実測し,未知の炭素フローを浮き彫りにすることを目標としている.