日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-BG 地球生命科学・地圏生物圏相互作用

[B-BG21_1PO1] 熱帯ー亜熱帯沿岸生態系における物質循環

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*渡邉 敦(東京工業大学 大学院情報理工学研究科 情報環境学専攻)、藤田 和彦(琉球大学理学部物質地球科学科)、本郷 宙軌(琉球大学理学部物質地球科学科)

18:15 〜 19:30

[BBG21-P02] 石垣島名蔵湾における大型藻類のδ15Nの空間分布と その成立要因について

*冨田 麻未1河内 敦2丸岡 照幸2辻村 真貴2 (1.東京大学大学院新領域創成科学研究科、2.筑波大学生命環境系)

キーワード:ウミウチワ類, リュウキュウスガモ, 窒素安定同位体比, 陸域由来窒素, 名蔵湾, 干潟・マングローブ域

亜熱帯サンゴ礁域に対する陸域由来の窒素負荷の影響を空間的に把握し,その空間分布の成立要因を検討するため,沖縄県八重山諸島の石垣島西部に位置する名蔵湾とその流入河川流域を対象として,ウミウチワ類(大型藻類)とリュウキュウスガモ(海草類)のδ15Nとδ13Cの空間分布特性の調査・分析,陸水の水質分析,および流域の土地利用解析を行った.
2013年6月に名蔵湾沿岸海域で優占して生育するウミウチワ類とリュウキュウスガモを計7測線上で50 mおきに採取し,各々計55試料を得た.併せて,河川水,湧水,海水の水質調査と採水,及び主要な流入河川及び排水路で流量観測を行った.実験室にて,植物試料についてはδ15Nとδ13C,C/N比を分析し,水試料については無機溶存イオン濃度を分析した.加えて,国土数値情報データを基にGISを用いて流域の土地利用状況について解析した.そして,水質結果と併せて流入河川流域の窒素負荷源の検討を行った.
結果として,ウミウチワ類とリュウキュウスガモのδ15N値は,全測線で沿岸から離れるにつれて最大+6 ‰から+2 ‰へと低下する傾向を示した.しかし,主要河川の名蔵川河口に近い測線では,海岸線から約1 kmの範囲においてδ15N値が他測線よりも高く維持され,その低下勾配も小さかった.その要因として,先行研究より名蔵川河口北方部は南風によって生じる流れが滞留する場所であることが示されており,本調査以前の3ヶ月間の最多風向も南風であった.したがって,名蔵川河口北方部周辺で名蔵川から供給される栄養塩が停滞し,海水の希釈効果が小さくなり,対象種のδ15N値が相対的に高くなったと推測された.
一方,流入河川のNO3-N濃度と土地利用形態別面積割合の相関を調べた結果,果樹園・耕作地,及び放牧地・草地の面積割合と河川水の硝酸態窒素濃度の間に正の相関がみられ,それらが主要な陸域窒素負荷源である可能性が示唆された.また,NO3-N濃度と流量を基にNO3-Nフラックスを算出したところ,名蔵川河口で81.9 mg/s,その上流部で59.4 mg/sとなり,名蔵川河口のマングローブ域,もしくはそこへ流入する別の流域を起源とする窒素が負荷されている可能性が示唆された.