日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04_29AM2] 高等学校の地球惑星科学教育

2014年4月29日(火) 11:00 〜 12:45 423 (4F)

コンビーナ:*畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、座長:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)

[G04-09] 動的な地震現象の理解のための室内地震探査実験装置の開発と実践

*桑野 修1仲西 理子1 (1.海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)

地球物理学の中でも大気海洋物理や火山分野に比べて、地震学で扱う現象は視認しにくく、断層破壊や波動伝播に関する動的な実験教材は非常に少ない。地震の源たる断層も、中学高校の教科書では静的なイメージで語られがちである。本研究では、寒天を利用して地震波伝播を実際に見て触って実感できる新しい実験実習教材を開発した。本実験装置では模擬地殻物質としてアガロースゲル(寒天の成分)を用いる。アガロースゲルは透明なので、光弾性の性質を利用することで歪みを可視化できる。濃度約1wt%のアガロースゲルのS波速度はおよそ4-5m/sなので、波動伝播の様子を肉眼で観察することができる。ゲルの濃度によって弾性波速度が変わるので、任意の速度構造をデザインすることもできる。例えば水平2層構造で実験をすると、屈折波の波面を観察することができる。高速度カメラで撮影した画像の任意の点の輝度の時間変化を書き出せば波形が得られる。すなわち画像上の任意の点に仮想的な地震計を設置できる。 この波形データは実際の地震波データと同様に解析できる。従来の地震探査実習は屋外の広い場所と多くの機器類が必要であるし、実験(実習)中にハンマーで起こした地震波を見ることはできないが、この室内模型実験を利用した実習は手軽なだけでなく、地震波が伝わる様子をその場で一目で容易に把握する事が可能になる。この装置を用いた新たな室内地震探査実習によって地殻を伝わる波と地殻の構造の関係を理解しやすくなる事が期待される。開発した実験方法による実習授業を、高校生を対象に実施した。その教育的効果や実習実施時の課題をについても報告する。