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[G05-01] 圧電ブザーとノートパソコンを用いた地震波探査教材の開発
地震波探査の基礎を学ぶ教材として,地動を捉えるセンサーに圧電ブザーを用い,ノートパソコンのステレオマイク入力でその信号を記録する計測システムを考案した.圧電素子は通常,電気信号を音に変えることに用いられるが,外部から力を加えると起電力を発生する.これを円筒形の蓋付き容器の底に固定し,蓋に空けた穴を通して釘を圧電ブザー開口部に挿入する.振動が容器の底から伝わると,慣性により釘が不動点として働き圧電ブザーが押され,起電力が発生する.これを発震源近くと観測点に設置し,発生した電圧を同期させて記録することで,距離と信号の時間差から,地中の弾性波速度が求められる.信号収録には複数のチャンネルと十分なサンプリング周波数を持つロガーが必要だが,それらは必ずしも安価ではないので,ここでは多くの学生が所有しているノートパソコンを用いた.ステレオマイク入力から震動源と観測点の記録を取り込むことで,それらを同じ時間軸で記録できる.OSによっては音声収録のためのソフトがあらかじめ備わっているが,使われるパソコンが様々なのと,説明を統一するために,フリーソフトのAudacityで収録した.信号をwav形式で保存した後,それをフリーソフトのWaveGraphでテキスト形式に変換した.これら収録と変換は同様の機能を持つソフトなら何を使っても良い.なお,WaveGraphには同名で変換機能を有さない別のソフトもあるので注意を要する.テキスト形式に変換された信号を適当なグラフィックソフトで開き,2点間の信号到達時間の違いを読み取る.これを用いた実習では,まず,学生にセンサーを自作させ,振動をノートパソコンで記録できることを確認させた.その後,屋外で計測を行った.地動はかけやで地面を5秒間隔で叩いて発生させ,1分間収録した.遠方では振動が弱くなるため,釘の上部に粘土を巻き,慣性を増すことで感度を高めた.解析に際しては,12発分の波形を重ねることで,スタッキングによるノイズ軽減を確認させた.発震源から3mおきに24mまで設置したセンサーからは,波の到達が距離に対してほぼ直線的に遅くなるのが確認され,およそ560m/sの直達波速度が得られた.但し,テストフィールドが学内で必ずしも適当でなかったためか,地下構造を求められる屈折波などは捉えられていない.本システムは安価なセンサーと汎用のノートパソコンの組み合わせから成り,地震波探査を学ぶだけでなく,費用をかけずとも工夫次第で実験や計測が可能であることを示す教材になると考えている.一方で,当然のことながら,専用品でないことによる制限も多々ある.センサーの周波数特性などは不明で,地動を捉えるのに適当である保証はなく,また制作者の穴開け精度などによっても,その特性は変化することが考えられる.ノートパソコンのステレオマイク入力は,左右チャンネルの絶縁が不十分なものが多く,発震源側の信号を抵抗で小さくする必要があった.また,今回の計測にはあまり影響ないと思われるが,マイク入力にはローカットフィルターが入っているようで,波形を正確に記録する目的には適さないこともわかった.これら性能評価も含めた内容とすれば,実習の意義はさらに増すと考えている.