日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG36_29PM2] 原子力と地球惑星科学

2014年4月29日(火) 16:15 〜 17:45 411 (4F)

コンビーナ:*梅田 浩司(独立行政法人 日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、吉田 英一(名古屋大学博物館)、座長:吉田 英一(名古屋大学博物館)

16:45 〜 17:00

[HCG36-06] 南九州の剪断帯の深部比抵抗構造と地下水中のヘリウム同位体比

*梅田 浩司1浅森 浩一1幕内 歩1小堀 和雄1 (1.日本原子力研究開発機構)

キーワード:1997鹿児島県北西部地震, 剪断帯, 比抵抗構造, ヘリウム同位体

宮崎市南部から霧島火山群を経て鹿児島県北西部に至る地域は,1961年吉松地震(M=5.5),1968年えびの地震(M=6.1),1994年大口地震(M=5.7),1997年鹿児島県北西部地震(M=6.5, 6.3)等,東-西~西北西-東南東方向の高角左横ずれを示す地震列が存在する(角田・後藤,2002).また,GPSデータの解析等によって推定されている北緯32°の東西に延びる剪断帯もこの地震列に相当する.これらの剪断帯が生じた原因としては,沖縄トラフの拡大に伴うマントル上昇流による地殻の引きずり(Takayama and Yoshida, 2007)や九州・パラオ海嶺の沈み込み(Wallace et al., 2009)等のモデルが提唱されているが,この地域には活断層の存在を含む明瞭な変動地形が認められないことから,剪断帯を伴う地殻変動は地質学的に極めて新しい時代に開始したものと考えられる.筆者らは霧島火山群の西側の剪断帯(1997年鹿児島県北西部震源域)の地殻~上部マントル構造を把握するため,地磁気・地電流観測による三次元比抵抗構造解析を行った.その結果,地下10 km以深から上部マントルに達する東西方向に延びる低比抵抗体が存在し,その周辺(高比抵抗体との境界部)に上記の地震が発生していることが明らかになった.また,この低比抵抗体は,白亜紀の四万十層群や中新世の紫尾山花崗閃緑岩の地域に位置するが,ここで採取した地下水の溶存ガスや遊離ガスに含まれるヘリウム同位体比(3He/4He比)は,大気の4倍以上の値を示す.このことは,低比抵抗体は地殻内に侵入したマントル起源の流体によって生じたものであることを示唆する.新しい剪断帯の形成に代表されるこの地域のネオテクトニクスは,マントル起源の流体や霧島火山群のマグマ活動(約30万年前以降)によって生じた地殻の不均質性が関与している可能性がある.