日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG36_29PO1] 原子力と地球惑星科学

2014年4月29日(火) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*梅田 浩司(独立行政法人 日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、吉田 英一(名古屋大学博物館)

18:15 〜 19:30

[HCG36-P03] 1999年台湾集集地震に伴う地下水位変化の深さによる依存性

*比嘉 万友美1中村 衛2小泉 尚嗣3頼 文基4 (1.琉球大学大学院理工学研究科、2.琉球大学理学部、3.産業技術総合研究所地質調査総合センター、4.台湾成功大学防災センター)

キーワード:地下水位変化, 1999年台湾集集地震, 地震動

地震時に地下水位や水圧が変動する現象がこれまで数多く報告されてきた(Montgomery and Manga, 2003; 小泉, 2013)。地震時地下水位変動の要因として、静的体積歪変化および地殻変動(動的体積歪変化や透水性変化・液状化等)が考えられている(Lee et al., 2002; Lai et al., 2004; Wang et al., 2001)。静的体積歪変化は地震時水位変化との対応が良い場合が多く報告されていることから(例えば、小泉, 2013)、地震時水位変化の主要因の1つであると考えられている。しかし、静的体積歪変化と水位変化が対応しないことも多い。この場合は、地震動の影響が大きいためとされる場合が多いが(例えば、小泉, 2013)、その詳細は明らかになっていない。
集集地震(Mw7.6)は1999年9月21日午前1時47分(現地時刻)に台湾中部で発生した。内陸直下で起こる地震としては最大級のものであったことに加え、断層周辺には高密度の強震動観測網(Lee et al., 1999)と地下水資源管理用の観測井戸が多数展開されていたため(小泉, 2011)、良好な地震波形データとともに多数の地震時の地下水位変化のデータが震源域近傍で得られている。
集集地震での地下水位変化に関して、Wang et al.(2003)では震源域近くの沖積平野部分の比較的浅い地下水において、液状化の観点から地下水位変化量と加速度応答スペクトルおよび速度応答スペクトルとの間に強い相関関係があることを示している。しかし、彼らの研究では多くの井戸をまとめて解析し地震動にのみ注目する一方、帯水層毎の特徴や透水性の影響等について、必ずしも十分検討されてはいない。液状化は、地震動だけで決まるものではなく、地下水の水文地質的条件(不圧か被圧といった帯水層の性質や透水性等)にも左右されるため、後者についても十分な検討が必要と考えられる。
そこで、我々は水文地質条件が同じと考えられる帯水層毎に地震時の地下水位変化を調べた。不圧帯水層である最も浅い帯水層1とその下の被圧帯水層である帯水層2の地下水を対象とし、異なる性質があるのか調査した。これらの井戸では、水位上昇した井戸(84本)と低下した井戸(14本)の両方がみられたが、水位低下に関しては地下水位変化のメカニズムが異なると考えられるため、本研究では沖積平野部分の水位上昇した井戸のデータのみを使用した。また、通常のスペクトルに比べて応答スペクトルは地盤への影響を読み取ることができるため、地震波の応答スペクトルと地下水位変化量との関係を調べた。その際、異なる周波数の応答スペクトルに対する地下水位変化をみるため、高周波側(1Hz)と低周波側(0.1Hz)に分けて計算した。元となる加速度地震波形のデータから、加速度応答スペクトル・速度応答スペクトル・変位応答スペクトルを上下動成分・水平動成分・3成分合成のそれぞれで計算している。帯水層ごとに応答スペクトルと水位変化量との相関係数を出したところ、帯水層によって応答する周波数帯が異なるという結果が得られた。不圧帯水層と考えられる帯水層1では高周波側(1Hz)において水位変化と応答スペクトルとの相関が良かったが、被圧と考えられる帯水層2では低周波(0.1Hz)において相関が良くなった。また、両帯水層に共通して透水係数と水位変化量は強い正の相関が見られた。