18:15 〜 19:30
[HDS05-P02] Lidarデータによる鮮新世~更新世堆積岩類山地の変形解析(予報)
キーワード:Lidar, 表層地形, 層面すべり, 線状凹地, 山体変形
1.はじめに
紀伊半島や大井川流域での四万十層群の変形が話題となることが多い中、これよりも地質年代が若く強度も小さい鮮新世~更新世の堆積岩類の変形がどのように進行しているかについてLidarデータの解析結果をもとに報告する。対象とする地域は、新潟県と長野県との県境付近に位置する新潟県津南町周辺の山地斜面である。津南町~小千谷市付近には信濃川に沿って広大な河岸段丘が発達することでもよく知られているが、津南町は松山ドームの南側に位置し、鮮新世~更新世の魚沼層が広く分布している。
2.津南町周辺の地形地質と山体変形
津南町の北西部は標高200~1100mの急峻な山地で、魚沼層の砂層、シルト・砂互層、塊状シルト層、火山岩類などが分布している。地質構造上信濃川に面しては南東傾斜の単斜構造となっており、魚沼層の傾斜角度は概ね15~40度で全体に単調な広がりを示す。本地域では多くの地すべりが発生しているが、長野県北部地震(2011年3月12日、M6.7、震源;長野県栄村)の際に、これが原因と思われる大規模な層面すべりが発生した。また、当地域の西側に隣接する関田山地には柄山崩壊堆積物をはじめ中期~後期更新世と考えられる多くの大規模崩壊が推定されている。
3.Lidar計測とデータ解析
1)Lidara計測
山地地形解析のために津南町北西部でLidar計測が2013年5月14日に実施された。計測はALS60システムにより実施され、計測された面積は約30km2である。計測データからグリッドセルサイズ1mのラスターデータを作成した。
2)解析手順
山体変形の特徴を把握するため以下の手順で山地斜面の地形解析を行った。特に、地質構造上層面すべりが発生しやすい条件下にあるため、この候補斜面に注目した。また、一部斜面については現地調査を開始した。
解析1
a, グリッドセルサイズ1mデータの作成
b, 斜面勾配分類(グリッドセルサイズ5m)
c, 斜面勾配15~40度のセルの抽出
d, 面構造の把握
e, “層理面(すべり面状)”斜面の抽出
解析2
a, グリッドセルサイズ1mデータの作成
b, 画像処理
c, 線状構造・エッジなどの線変状地形の抽出
d, 陥没帯などの面変状地形の抽出
e, 解析1と2との総合解析
4.解析結果と議論
Lidarデータの画像処理とGIS処理によって多くの特徴的な線構造・面構造等が明らかとなった。Lidarデータの処理によって得られたセルデータを整理することによって層理面と考えられる斜面が山地に非常に広く認められることが判明した。更に、その地形的特徴から、この層理面をすべり面とした痕跡のある斜面を2か所抽出した。これらの斜面はいずれも変則的な線状凹地と地形面を伴う層面すべり地形を示す特徴的な斜面を形成している。もっとも規模の大きな線状凹地は山腹斜面を斜めに走り、その延長は550~600mに達し、線状凹地のなす変形した地形ブロックの厚さは最大約6~10mである。これらの地形的特徴は層理面が大規模な山体の変形と崩壊に大きな役割を果たしたことを示唆している。
以上は四万十層群の変形などには見られない特徴的な地形であり、層面すべりによる山体変形を抽出する際のキーポイントとなり得る。
5.まとめと課題
Lidarデータの解析により、当該地域では大規模な山体変形が過去に発生したことをうかがわせる特徴的な斜面の分布を確認した。今後は現地での調査を進め山体変形の解明を進めたい。
参考文献 竹内圭史、ほか(2000)松之山温泉地域の地質. 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅), 地質調査所, 76p.
柳沢幸雄、ほか(2001)飯山地域の地質. 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅), 地質調査所, 144p.
紀伊半島や大井川流域での四万十層群の変形が話題となることが多い中、これよりも地質年代が若く強度も小さい鮮新世~更新世の堆積岩類の変形がどのように進行しているかについてLidarデータの解析結果をもとに報告する。対象とする地域は、新潟県と長野県との県境付近に位置する新潟県津南町周辺の山地斜面である。津南町~小千谷市付近には信濃川に沿って広大な河岸段丘が発達することでもよく知られているが、津南町は松山ドームの南側に位置し、鮮新世~更新世の魚沼層が広く分布している。
2.津南町周辺の地形地質と山体変形
津南町の北西部は標高200~1100mの急峻な山地で、魚沼層の砂層、シルト・砂互層、塊状シルト層、火山岩類などが分布している。地質構造上信濃川に面しては南東傾斜の単斜構造となっており、魚沼層の傾斜角度は概ね15~40度で全体に単調な広がりを示す。本地域では多くの地すべりが発生しているが、長野県北部地震(2011年3月12日、M6.7、震源;長野県栄村)の際に、これが原因と思われる大規模な層面すべりが発生した。また、当地域の西側に隣接する関田山地には柄山崩壊堆積物をはじめ中期~後期更新世と考えられる多くの大規模崩壊が推定されている。
3.Lidar計測とデータ解析
1)Lidara計測
山地地形解析のために津南町北西部でLidar計測が2013年5月14日に実施された。計測はALS60システムにより実施され、計測された面積は約30km2である。計測データからグリッドセルサイズ1mのラスターデータを作成した。
2)解析手順
山体変形の特徴を把握するため以下の手順で山地斜面の地形解析を行った。特に、地質構造上層面すべりが発生しやすい条件下にあるため、この候補斜面に注目した。また、一部斜面については現地調査を開始した。
解析1
a, グリッドセルサイズ1mデータの作成
b, 斜面勾配分類(グリッドセルサイズ5m)
c, 斜面勾配15~40度のセルの抽出
d, 面構造の把握
e, “層理面(すべり面状)”斜面の抽出
解析2
a, グリッドセルサイズ1mデータの作成
b, 画像処理
c, 線状構造・エッジなどの線変状地形の抽出
d, 陥没帯などの面変状地形の抽出
e, 解析1と2との総合解析
4.解析結果と議論
Lidarデータの画像処理とGIS処理によって多くの特徴的な線構造・面構造等が明らかとなった。Lidarデータの処理によって得られたセルデータを整理することによって層理面と考えられる斜面が山地に非常に広く認められることが判明した。更に、その地形的特徴から、この層理面をすべり面とした痕跡のある斜面を2か所抽出した。これらの斜面はいずれも変則的な線状凹地と地形面を伴う層面すべり地形を示す特徴的な斜面を形成している。もっとも規模の大きな線状凹地は山腹斜面を斜めに走り、その延長は550~600mに達し、線状凹地のなす変形した地形ブロックの厚さは最大約6~10mである。これらの地形的特徴は層理面が大規模な山体の変形と崩壊に大きな役割を果たしたことを示唆している。
以上は四万十層群の変形などには見られない特徴的な地形であり、層面すべりによる山体変形を抽出する際のキーポイントとなり得る。
5.まとめと課題
Lidarデータの解析により、当該地域では大規模な山体変形が過去に発生したことをうかがわせる特徴的な斜面の分布を確認した。今後は現地での調査を進め山体変形の解明を進めたい。
参考文献 竹内圭史、ほか(2000)松之山温泉地域の地質. 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅), 地質調査所, 76p.
柳沢幸雄、ほか(2001)飯山地域の地質. 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅), 地質調査所, 144p.